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April Dream(1/2)

今日は4月1日、エイプリルフール。笑える楽しい嘘は大好きだけど、今日はフールではなくドリームで。長年追い求めている私の夢を綴ってみようと思います。

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6年前にアレンジした曲を引っ張り出して、練り直しを始めた。今の自分の音で試したくなったから。

2015年に弾いたチック・コリアのSpain。冒頭はロドリーゴのアランフェス。ナイロン弦のギターとアルトサックスの2人が、フリーテンポで語り合う、2本の調べ。

一瞬の静寂の後、空気が一転する。ドラムとラテンパーカッション、ベース、サックス、金管、ピアノが1つになって、空気を陽の光で満たす。よく知られたあのフレーズが音符を踊らせる。 


構成は6年前と同じなのに、今、指から出てくる音はハーモニーもリズムも違う。アドリブがどんどん新たな色に変わっていく。

ピアノのアドリブに金管とサックスが寄り添い、トランペットのアドリブの背後でピアノが踊る。弾きながら夢中で楽譜に書き込み、先へ弾き進む。

(そっか。この6年って、こんな感じだったのか)


自分の中から次々に音が溢れ出す。弾き進むにつれて、6年前の音が今の色に変わって行く。

(なるほど。そっか。これが今の自分の音なのか)


それなら5年後、10年後はどう変わっているのだろう。せめて年相応の音になっているだろうか。

こんな時、いつも師匠の言葉を思い出す。

まだ30代に入ったばかりの頃だった。自分にはまだ早いと分かっていながら、弾きたい気持ちを抑えられずに師匠の前でマーラーのアダージェットを弾いたのだ。 

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アダージェットは自分の転機になった曲だった。

20代のある日、一人暮らしの部屋で片付けものをしながら、何気なくアダージェットを聴いていた。その時、目の前で何かが(ふわり)と動いた。周りを見回した。


…何かが降ってくる。


それはゆっくり漂うように、辺り一面に降っていた。見上げると、遥か上から無数の柔らかな光の粒が静かに光りながら降りてくる。

ぼんやり上を見上げながら、あれは何かの音楽で、そこから降ってきた音の粒なのだと感じた。

我に返った時、アダージェットが現実の世界の音で鳴っていた。

(…あの音楽を奏でたい)

そのためにはあの光の粒を曲にしなければならない。あの音楽はぜったい管弦楽だ。だが自分は管弦楽で作曲したことは一度もない。

(いや、でも、どうしてもあの音が欲しい!)

それは願望というより渇望だった。しかしあまりにも自分の力量では程遠い望みだった。

いったい何年かかるだろう。まったく想像もつかない。頭がグラグラした。


その時から「創る」という世界へ向かって歩き出した。

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