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認知症のおばあちゃんと私のお家

少し前のできごと

 
私の家の敷地内に
物が投げ入れられた時期があった
 

時々夜中に
物が落ちる音がしていて
 
どうせ
いつもの空腹時に起こす
猫のイタズラだろうと疑うこともしなかったのだが
 
両脇に猫を抱えウトウトしていた深夜2時
いつもの物が落ちる大きな音で
私はそれが猫の仕業でないことを知った
 
 
誰かいるのか
野良猫か
それとも怪奇的な現象か
 
 
不安と共に明けた朝
大量の物を発見してしまう
 
 
誰かの嫌がらせ
 
ご近所トラブル
 

うらみ つらみ ねたみ そねみ


妄想は膨らみ

私のハートは破裂寸前

 

大家さんに連絡するも

警察に被害届を出すしかない。と

 

 

そんなやきもきした日々を過ごした数日後 

 

たまたま家に来てた父親が
事件解決へと導いた
 
 
私の家に
物を投げ入れていた人
 
 
それは
向かいの家のお婆さん
 
だったのだ
 
 
 
そのお婆さんは
認知症を患っていて
 
その様子は
たまにしか見かけない私でも理解していた
 
 
 
ご家族に事情を話し
投げ入れた物を回収してもらった
 
 
「これ。ないなーって思ってたんですよ」
 
ビニール袋に入れながら
お婆さんの家族が話しかける
 
 
その表情は読み取り難く
穏やかにも見えるし
悲しいようにもうかがえた
 
 
3つのビニール袋は
それぞれ溢れそうなくらい
物がぎゅうぎゅうに詰め込まれ
 
それを両手でなんとか持った姿で
 
その人は
「怖い思いをされたでしょう。
 ご迷惑をおかけしました」
 
と改めて謝罪の言葉を放った
 
 
私は
「おばあさんで良かったです」
 
 
と言葉を返した
 
 
 
それからお婆さんは見かけなくなった
 
もちろん物が投げ入れられることも無くなった
 
 
 
その男性が
「来月施設に入れるんです」
って言ってたから
 
 
もうここにはいないのかな
 
 
***
 
 
とても静かな昼下がり
 
 
太陽は程よく部屋を暖かく
そして明るくさせ
 
 
心地よい風は
鳥の鳴き声を連れてきて
ほのかに夏の匂いも混ざり始めている
 
 
我が家の観葉植物は
芽吹き始め
この小さな家の中でも
何かが少しずつ変化している
 
 
 
向かいの家が見える部屋で
ブランチを食べながら
そんなことをふと思い出した
 
 
 
 
その夜
事件解決に導いた父親が
めっちゃイキって自慢してきた
と妹から連絡がきた
 
 

今日も我が家は平和である
 

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