VRCの一日がはじまるまで -夏-

目が覚める。クーラーがガンガン効いているこの部屋は適温に保たれているが、それでも汗はかいてしまう。首の後ろに溜まった汗を手で拭いながら体を起こし、そのまま後ろで手を組んで引っ張った。後ろ手に引っ張って胸を張ったまま首を左右に倒すとパキポキと小さく骨が軋む音がする。はあ、と大きく息を吐いて前進を力を抜き立ち上がった。熱いと血流が流れやすいのか冬よりも目覚めはすっきりしている。スタスタと相変わらず動線しか空いていない部屋を横切って洗面所へ行き、洗顔と歯磨きを済ませた。
夏は朝の支度も楽だ。夜にティーパックを突っ込んでおいたボトルを冷蔵庫から取り出し、冷凍庫に入れてある食パンをオーブントースターで焼くだけ。待つのは五分ほどでその間にパソコンをつけツイッターをチェックする。今日もやっぱりツイッターの住人は推しのことを叫び泣いたり笑ったり狂ったりしながら、たまに昨今のニュースについて少しだけ意見を書いたりしている。
コロナが蔓延しだしてもう一年半が過ぎた。VRChatを始めた頃はこんなにのめり込むとは思っていなかった。もうちょっと自重しなければと思うものの、外にもロクに出られず出たところで行くあてもない今の情勢的に、ネットの世界でいろんなワールドを見る方が断然楽しいのだ。仕方あるまい。寝起きにパソコンをつけてツイッターを眺めながら朝ご飯を食べ、そしてVRChatを起動する。このルーチンが崩れたとき生活リズムも崩れてしまって驚いたものだ。人と長期間話せないという状況はじわじわと精神を削ってくるらしい。VRChatに、というより、人と話すことに依存しているのかもしれない。
相変わらずツイッターとVRChatが私の世界の間口であり、インプットとアウトプットの出きる場だった。これがなかったら私は今頃こんなに小説を書いていないだろうし、もっと鬱々と日々を送っていただろう。VRChatサマサマである。
そんなにハマっているならVR機器を買えばいいのに、と言われそうだが、私は極端に酔いやすいのだ。あらゆる移動手段で酔うしゲームでも酔う。FPSは若干克服できたもののVRとなるとやはり気持ち悪くなってしまう。それに、VR機器を買うならその前に買っておきたいものがたくさんあるのだ。残念ながら。
小説でアウトプットをしているせいか最近インプットが明らかに足りていないと感じる。それでも小説は書きたくて、時間も足りていない。
そんなことを考えながらVRChatにログインし、自作ワールドを開いてぼーっとする。朝か昼か夜には誰かしら来てくれる。ありがたいことだ。
人と話せるこの場が好きだ。
だから私はこうして小説を書いていられる。

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