見出し画像

第一章 3話 音が聴こえる

 3・音が聴こえる


 子供の頃、夕焼け空を見上げた。
 青と桃色の織り混ざった空に一番星を見つけたとき、空からメロディーが降ってきた。あまりにきれいだったから、慌てて口の中で復唱し記憶に刻みつけたっけ……。
 景色を見ると音が聴こえる。
 美しいものを見ると旋律が空から降りてくる。
 和音を構成する各音符が一つずつ順番に音を発し、光を反射して輝くようなイメージをともない、きれいなアルペジオを奏でていく。音程はいつも同じで、見る景色によって少しずつ音色や音の大きさが変わることもあった。ただ、僕にとってごく自然なこの現象が、他の人にはない感覚だと知ったのはかなりあとのことだ。

ここから先は

4,610字
全4章、37話構成、文字数約22万文字(分厚めの文庫本程)。既に執筆済みのため順次投稿予定。

22万文字・全37話分 → ¥200【単体マガジン価格】1話毎でなく長編全体の価格が200円です。《ご注意》一時期Kindle電子書籍販売…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?