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「やっぱり、直接じゃないと、わからない」

当院でのオンライン診療のお話です。以前、これに関連する記事を2つ、書きました。

さて、その後、どうなったかというと…。

最近、どんな感じ?

コロナ第1波の頃に比べると、患者さんの数は戻ってきました。受付では来院者全員(付き添いの方含め)に、「風邪症状はないですか?」という質問をし、検温をしています。定期受診の患者さんに「風邪での受診じゃなく、いつもの薬をもらいに来ただけ」というようなことを怪訝な表情で言われるのも、もう慣れました(笑)。
そして、風邪症状での受診も増えたように感じます。院外に設置した長椅子での診察になりますが、対応はしています。
一度、頭痛を訴えて来た患者さんが、診察中に「昨日は38度の熱があった」と言い出し、本当は院外対応にすべきだったんじゃないかと院長から注意があった、なんてことも。診察後、看護師さんが「熱があったんですか? 風邪症状はないと聞いていましたが」と確認していましたが、「今は熱はないです。あるのは頭痛だけです」と言われ、スタッフ一同、うーんと悩んだことも。頭痛持ちの方もいらっしゃるので、なかなか難しいところなんです。結局、「頭痛も風邪症状の一環とみなし、院外での対応とする」という終着点になりました。

オンラインで診た患者さんってどのくらい?

当院でのオンライン診療に対するスタンスは、以前にも書きましたが、こうです。

院長の考えでは、あくまで感染防止対策の1つとして、今のように高熱の患者さんのみに留めるようです。慢性疾患の患者さんや禁煙外来、睡眠時無呼吸(CPAP)の治療は、現状通り、来てもらう方向で。これも、「や、オンライン診療が当たり前っしょ」というような風潮になれば、そのときに拡充したいという考えでした。

さて、実際に診た数ですが…上の記事を書いて以降、ゼロです(笑)。申請をしたり、curonを使える状態にはしたものの、オンライン診療はしていません。「オンラインで診てもらえますか?」という問い合わせも来ていません。熱がある患者さんからの受診問い合わせが入って、院長にどうするか聞いても、「来てもらって院外で診よう」という対応になっています。
ある日の全体ミーティングで院長が口にしたのが、今回のタイトルにもなっていますが、「やっぱり、直接じゃないと、わからない」という言葉です。LINEでの診察を数例やってみて、こう言っていたので、正直な感想なんだと思います。せっかくマニュアル作ったのに、ともちょっと思いましたが(笑)、今まで勤めてきた企業でも、頼まれて作ったものが全て無駄になるという経験はよくあることでしたから。

この先はどうなるんだろう?

インフルエンザの流行が心配になる季節がやってきます。が、それでも、来ていただいて診ることになるんじゃないかな…と推測しています。直接の診察だってコロナとインフルエンザの判断をどうつけるか難しそうなのに、遠隔でなんてもっとわからないでしょうからね。患者さんの方から「オンラインでお願いしたい」と言われた場合にどうするかは…またそのとき、院長が考えるんじゃないかな、と。

「病院へ行くこと」への恐怖感

一時期は「感染症対策の1つとして、できるだけ病院には行きたくない」という意識が強くあったように思いますが、今はどうなんでしょうか。患者さんが戻ってきたということは、そう感じている人が少なくなっているんでしょうかね。
第1波の頃は、受付で「あんまり病院には来たくないんだけどね」と言う患者さんもちらほらいらっしゃいました。「こちらはその病院にいなくちゃいけないお仕事なんですけどもね…」と心の中で何度呟いたことか(笑)。「病院に行ってもいいのかしら」という問い合わせに、「こちらからは『来ないで下さい』とは言ってないです…」と思ったことも。最近はそんな言葉も聞かれなくなりました。「マスクをして、対策をきちんとしておけば、病院に行っても大丈夫なんだ」という意識になっているのかもしれません。

変化の中で

一般企業での勤務経験しかない私が、医療業界に飛び込んだ数ヶ月後、こんな世の中になりました。このタイミングでクリニックに転職したことも、未来の自分が振り返ったら何か意味を見出す出来事なのかもしれません。
なんとなく思うのは、『直接、医師に診てもらえることをウリにするってのもありじゃない?』ということ。画面越しじゃなくて、実際に体を観たり触ったりしてもらって、診断をしてもらう。今までってこれが当たり前でしたが、オンライン受診が割と簡単に選べる今、どっちがいいか患者さんが選べばいいんじゃないかと思うんです。画面越しに問診して薬が手に入ればいいなら、オンライン診療ができる病院を選べばいい。触診や検査を望むなら、それを受け入れてもらえる病院を探せばいい。うちならオンラインじゃなく、直に診察しますよ、どうですか、と。
症状にもよりますよね。オンライン診療に慣れた人が、急激におなかが痛くなったときに、どんな判断をするでしょう。画面越しに症状を言って薬もらえればそれでいいと思うのか、こういうときは直で診てもらわなきゃダメだと考えられるのか。腹痛を訴えて来院し、エコー検査した結果、虫垂炎の疑いがあるので大きな病院へ紹介することも、当院ではよくある話。オンラインで済むかと思ったら、医者から「その症状だったら来院してもらわないと診断できません」と言われて、だったら最初から病院に行けばよかったなんてことも容易に想像できますし…。
患者さんも、病院側も、変化の渦の中。そんな状況で自分に何ができるのか。もうすぐでやっとこさクリニック勤務1年目を迎えようとしている、ひよっこの私なりに、動いています。

皆さんの『スキ』や『サポート』が、私とこのアカウントを育ててくれる源になると感じています。よろしくお願いいたします。