見出し画像

病院受付でよくある質問:待ち時間

コロナ禍の今の時期は特に、病院ではあまり待ちたくないのが本音では? 病院の受付で仕事をしている私も、患者さんからよく聞かれます。
「何分くらい待ちますか?」
この質問に正確な答えを出せる人は、おそらく、いないのではないでしょうか。先日、私が体験した経験を基に、ご紹介します。

実例:待っていたのは2人

平日の午前中、Aさんがいらっしゃいました。そのとき、待合室にいたのは2人です。
Bさんは、毎月、決まったお薬をもらいに来る患者さん。受付では特別なことは何もおっしゃってなかったので、恐らく5分くらいで終わるかなと推測しました。
Cさんは、雇用時健診でいらした方。採血や測定などを終え、最後に医師の問診を残すのみです。こちらも5分くらいで終わるのではないかと思っていました。
「何分くらい待ちますか?」
Aさんに尋ねられた私は、こう答えました。
「そうですね、たぶん10分から15分程度ではないかと思います。お時間、大丈夫ですか?」
大丈夫とのことだったので、問診票記入などをお願いして待っていてもらいました。

Bさんの診察

Aさんが受付に来てから数分後、Bさんが診察室に入りました。定期受診なのですぐ終わるかと思いきや、長く時間がかかっています。しばらく話し込んだ後、受付のプリンターに出てきたのは、他の病院への紹介状でした。会計できる状態になってからカルテを確認すると、前回の診察後、体調の変化で気になることが出現し、それをBさんが院長に相談したようです。すると、そこから深く突っ込んだ話になり、大きな病院で一度診てもらったほうがいいでしょうという判断になったのでした。
受付時は「いつものお薬をもらいに来ました」としかおっしゃっていなかったので、このような流れになるとは全く予想がつかなかったのです。その後、受付では、行っていただく病院へ紹介状をFAXし、予約を取って、病院からの返信FAXを待ち、Bさんに予約日時や紹介先での受付場所などを簡単に説明して、会計をし、お帰りいただきました。

Cさんの問診

健診の最後に院長がする問診は、既往歴(きおうれき、と読みます。これまでの病歴のこと)や業務歴、自覚症状、他覚症状の確認がまずありますね。それから血圧測定をします。そして、ここまでの検査で結果が出ているものを見て、気になる点があればさらに確認していきます。他にも、喫煙歴や服薬歴などの項目を指定する企業さんもありますが、それでも大幅に時間がかかることはありません。
Cさんはベーシックな健診内容だったので、ぱっと終わると思っていました。ところがこちらも予想よりも時間がかかり、健診では滅多に出てこないはずの紹介状が、受付のプリンターに出てきたのです。後でカルテを開いてわかったのですが、実は健診項目にあったとある検査(院内ですぐ結果がわかるもの)で気になる点があったのです。院長が問診のときにその点をいつもより深く調べ、大きな病院で診てもらった経験はないとCさんが答えたことから、紹介状発行となりました。
問診後のCさんには、Bさんと同じことをして、なおかつ健診結果の受け取りについての説明をし、お帰りいただきました。

Aさんが診察に入ったのは30分後

BさんもCさんも、受付では予想外だった流れ。もちろん、Bさんの紹介先の予約を取っている間にCさんは診察室に入りましたし、Cさんの問診が終わった時点でAさんの診察に入っています。
Aさんに「10-15分くらいの待ち時間だと思います」と答えてから診察に入ってもらうまで、実際には30分ほどかかってしまいました。私の答えの2倍、時間が経過しているんですよね。非常に申し訳なかったなと思います。もちろん、Aさんにお帰りいただくときには「大変お待たせしてすみませんでした」とひとこと添えます。笑顔で「大丈夫です。ありがとうございました」という答えが返ってきたので、ほっとしました。

今度聞かれたらどう答える?

同じ質問をされることは、この先も多々、あるはずです。皆さんだって、病院の後に他の予定が控えていたり、家で待っている人がいるので早く帰りたかったりすれば、「どのくらい待ちますか」と聞きたくなりますよね。
でも、次に同じ状況でどのくらい待つか聞かれも、今回のようなイレギュラーケースを考えて「30分ほどお待たせするかもしれません」とは私は言いません。だって、レアなことがたまたま続いて、こうなってしまったのですから。次回もAさんに伝えたのと同様、「10-15分」と答えるでしょう。

かかる時間は診察してみないとわからない

例えば、胃痛を訴える患者さん。診察室ではどんなことが待っているでしょうか。当院の場合を推測すると…。
・問診
・ベッドに横になっての触診
・簡易エコー検査
・エコー検査(簡易よりももっとしっかりと調べます)
・後日、胃カメラでの検査をすることにして、その説明や日程調整
・他の病院への紹介
・お薬の処方
こんな感じのメニューが思い浮かびますが、どの患者さんにどこまでするかは診察してみないとわかりません。全ては患者さんを診察した院長次第。院長だって、患者さんと接してみないとわからないんです。ということは、質問してきた患者さんの前にどんな方がいるかは、院長も看護師も受付も、聞かれた時点では答えを持っていないんですね。ですので、今回のように、待ち時間を尋ねられて答えても、大幅に違ってしまうようなケースも出てくるのです。
正直なところ、「まだなの?」と言われても、「すみません、お待ちいただけますか?」としか答えられません。「いつもの薬だけでいいんだけど」と言われても、本当にいつもの薬だけで大丈夫なのか判断できるのは院長だけです。「別に変わりないんだけど」と言われても、実は前回受けた血液検査で何かの値が高かったりするようなこともあるわけで、変わりがあるかないかを判断できるのも院長だけなんです。少なくとも、受付では判断できません。

「何分くらい待ちますか?」に対する正しい答え

それはズバリ、「わかりません(にっこり)」ではないかと、私は感じています。これは、病院で働き始めてからわかったこと。いろんな場面を想像して、身に染みました。
ですが、「わかりません(にっこり)」では納得していただけないので、いちばん多いケースを基にして、「○分くらいだと思います」とお答えします。もちろん、想像より時間がかかれば、「ごめんなさい、もうちょっとかかりそうなんですが」とか「お待たせしてすみません」といったような、言葉でのフォローはします。ですが、当院の診察は予約制ではないので、患者さんは来た順番にお呼びします。「薬だけと言っているから」といって順番を早めることはありません。

できれば余裕を持ってきてください

病院に行くときは、スケジュールに余裕をもってお越しください。また、電話で「どのくらい待つ?」と聞かれても、病院に着いた時点では状況が大きく変わっていることもよくある話ですので、答えた時間よりももっとかかることもあります。
ぜひぜひ、ご理解くださいね。

※あくまで当院の場合、です。全ての医療機関がこうではありませんので、ご了承ください。

皆さんの『スキ』や『サポート』が、私とこのアカウントを育ててくれる源になると感じています。よろしくお願いいたします。