詩「卵朝」
割れている卵がすべて
語っているような気がした朝のことです
その前の夜をつたって夕方にたどり着くと
ふわり 眼前の風に似た匂いが
記憶 落ち葉 その類
頬杖 榊 引いた籤
さざなみの中で君が言います
「ここは井戸なの とても深い」
季節の緑は濃いはずだった
忘れられてる窓際の熊
切符いらずの旅の終わりに
指をちぎってふたりで食べた
物語は喪失から始まり
失ってはいけない物語がある
割れている卵がすべて
語っているような気がした朝のことです
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