詩「水槽は実に丁寧に清掃されている」
水槽は実に丁寧に清掃されている
呼吸を続けるわたしは
手の先から水になっていく
すう と
ぱら と
水槽は居心地が良かった
蛍光灯の明かりがわたしを
幾重にも折り重なり
通り越していった
端っこだけ手を繋いだ
しかしこの部屋には音がない
完ぺきな音響設備が
整っているというのに
(やれ歌ってやろうか)
そそのかされずとも 声は
また清掃される
また清掃される
わたしの番はここまでだ
唾でもはいておいてやろうか
また清掃されるが
ため息の形は墓石
墓石の中には石の成分
だがため息の成分はため息
大丈夫だ 大丈夫だ
わたしの成分は まだ、わたし
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