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『開幕前夜』第10話「調和」

 彼女(かのめ)の部屋。

唯一の鏡。唯一の理解者と居る。

心身ともに裸で、

抱き合っている。

性的なものではない。

彼女をつくっている。

彼女の記憶を。

彼女には、

大きすぎる想念。

大きすぎる屋敷。

大きすぎる部屋。

大きすぎる力“字伏”。

 此方人等(こちとら)は強くあらねばならない。

彼女と歩む為に。

それでも彼女の記憶を集めていると涙がとまらない。

彼女? 此方人等はここに居るよ。

かくす此方人等。

だます此方人等。

大嫌いだ此方人等自身。

 此方人等が解放すると、

彼女の涙をみる事になる。

しかしそうしなければ。

此方人等文字通り「命」を失う。

………………
…………
……

 此方人等告げる。

「“調和(しらべ)”完了」

此方人等、笑む……しかない。

「ああ。もう大丈夫だよ」

痛む。

と接吻。

唯一のご褒美。

生きる意味。

まだ肌寒き春の事。

希望の学び舎よ。

どうか彼女を普通の女の子にしてあげて下さい。

彼女(おとめ)の真心の笑顔をみる為に。

でもどうか、

此方人等以外に見せないで……、



 あなたじしんをあたえれば、
あたえたいじょうのものをうけとることになるだろう。
できている。


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