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『✕○!i』第9話「七夕の人」

 捧華の誕生から、およそ4ヶ月程が経ちました。

彼女は現在……、

………………
…………
……

「おとぅさん。あてぃしおさんぽにいきたいので」

 すでに身長130センチに届こうとし、少し舌足らずではありますが、言葉もそれなりに操れる様になるまででした。竹取物語が戯言ではすまなくなってしまいました……。

 捧華生まれし3月3日午前4時頃、
魂の双子は、言の葉を重ねて、

「お父さんお母さん、これから捧華はどんどんと成長していき、大体、ひとつの目安として、日本国現民法の結婚適齢まで育まれて、ようやくお父さんお母さんと同じ時間軸を過ごせる様、因果律に固定できます。この件はボク達の事象との深い因果関係の為です。だからして、ボクとワタシは、家族であるのですわ」

そう知らせてくれました。

 僕は、焦り訊ねる、

「戸籍登録様々に、捧華の居場所作りはどうなる?」

どうか教えてくれ。

倖子君の頷きも覚える。

 すると、

あたたかな、

誠の優しさに満ちたてのひらの上に、

在る感覚。

てへっ♪ ふふっ♪

「お父さんお母さん達への、捧華の、いわば義務教育期間が終わるまでの望みを叶えうる様々な記憶は、ボクとワタシにもなす術が無く、叶えて差し上げる事が、残念ながらできません。ですが、各種の捧華の居場所確保は、現時点でほぼ万全に行われております。この『ほぼ』の、大部分は、未来のお父さんお母さんの、うろたえのゆらぎに因るものです。お父さん? お母さん? どうか捧華に関して困った時は、ボク達を信じて、全て『イエス』で通して下さい」

場の空気が僕の知る自然に戻って、魂の双子は消失。  

 僕は、君をみて言外。

伝わり、だからふたり、……もう、
笑うしかないよね?

この笑顔から4ヶ月。

1、2ヶ月目は育児戦争。

3ヶ月目でやっと小康状態に持ち込み、

そして……、

………………
…………
……

 現在、彼女の声音が、鼓膜を震わせたのです。子供を持つせかい中の親御様。本日も、お疲れ様で御座居ます。

「うん。良いよ捧華。お散歩行こうか」

「あいっ!」

彼女は力強く頷く。

15分程捧華の足取りに合わせゆっくりと歩き、

我らが市営住宅、菜楽荘の敷地を出ると、目につくものがちらほら。

葉竹に短冊です。

「……そうか、今日は七夕か」

季節を愛でる余裕の無い自分を恥じました。

捧華が僕の言葉に反応し、

「た……たにゃばた? おとぅさん、たにゃばたってなぁに?」

 僕は、どう端的に話そうか思惟、

「……七夕はね? 日本という僕と捧華が居る国の、季節の節目となっている日のひとつ、なんだよ?」

「いみがわかりましぇん?」

はっきり愛娘、

真っ直ぐも善し遠回りも善し。

……そうかぁじゃあこうだ、

「大切な人同士が、お互いの大切さを確かめ合う日の事だよ」

ひたいしわよる娘。

ふふ、カメラ欲しいな。

「たいしぇつ、たいしぇつ。ささぇはかじょくがたいしぇつなので」

おっと、いえいえ父親で御座居ます。

「すごいなぁ捧華。そうだよ? 捧華は家族が大切。僕も家族が大切。相思相愛ですね?」

「うんっ♪」

なにかつかめたのか嬉しそうだ。そう、捧華は僕を照らす陽の光だ。

 それから、

もしやと思い、

この地点からわりと近くに在る。百円ショップ【グリーン】さんに、捧華を連れて寄ってみる事にしました。

 それは……、「あった♪」

捧華はハテナと佇む。

「じゃあ捧華? 手をつないで、ゆっくり帰ろう」

自分に穏やかさを染ませる様に、

捧華へと声を掛けました。

帰宅し、君とただいまおかえり。

 僕達は、お星様と、ささやかな短冊に、

願いを込めたので、御座居ました。



 きみとえいえんをあるけたらな。
そのどこかでみんなのていえんがまっているきがするよ。
みなさまにかんしゃ。

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