「ドライブイン カリフォルニア」ネタバレ感想

皆様お久しぶりです。
今回は舞台「ドライブインカリフォルニア」を見に行ってきたのでその感想を書いていこうと思います。
見に行ったのは7月2日のマチネ(12:00開演)。場所は大阪のサンケイホールブリーゼです。私は二階席の左前の方で見てました。 

なお、タイトルにある通りネタバレしていくレポなのでこれから見るという人、ネタバレ踏みたくないという人はお気をつけ下さい。

キャスト

アキヲ  阿部サダヲ(マリエの兄)
マリエ  麻生久美子(看板娘・ユキヲ母)
若松   谷原章介(マリエのマネージャー)
クリコ  猫背椿(若松の妻)
ユキヲ  田村たがめ(死んだ少年)
ケイスケ 小松和重(アキヲの異母兄弟)
エミコ  河合優実(住み込みのバイト)
マリア  川上友里(アキヲの彼女)
ヤマグチ 東野良平(おもちゃ屋の男)
大辻   皆川猿時(エミコの旦那)
ショウゾウ 村杉蝉之助(祖父)

あらすじ

話の舞台はカリフォルニアという名前のドライブイン。この裏の竹林で亡くなった少年(ユキヲ)が幽霊の語り部となり、話が進んでいきます。

話の始まりは少年が生まれる前までさかのぼります。
十数年前、駆け落ちをしようとした二人を追いかけてきた男性(若松)は、看板娘(マリエ)の女の歌を聞き芸能界にスカウト、マリエは上京しやがて結婚します。芸能界ではあまり売れなかったものの子供も授かり良い生活を送っていました。
この子供が語り部の少年(ユキヲ)です。
マリエが上京して十数年後、ユキヲの父親の事業がたおれ、家族は莫大な借金を背負うことになります。当時中学生のユキヲは首をっってしんでいる父親を発見、そのトラウマから耳が聞こえなくなりました。
遺された親子は若松とドライブインカリフォルニアに戻ってきます。
ドライブインは住み込みのバイトであるエミコが増えた以外、上京したときとほぼ変わらない状況でした。ユキヲはここで地下に住んでいるという目の見えない祖父ショウゾウに出会います。何故か祖父の声は聞こえるというユキヲ。どうやら身体に障害のある人の声は聞こえるようでした。
死んでいると聞いていた祖父は、とある事件を起こしそれから十数年地下に身を隠して近隣には死んだと偽っていたのでした。その祖父の話で明らかになる家系の役目「まれごと師」。年に一度お祭りのときに小さな事件を起こし災いが起こらないようにするという。祖父はそのまれごとで民家数件を焼き重症者を複数だしたことで地下に身を隠していました。
たまたまそのまれごと師の衣装などを隠していた倉庫の鍵が手に入り、ドライブインの皆に真実が明かされたことでマリエの精神状態が悪化。自殺をほのめかすようになります。
ある日ユキヲは竹やぶに行った際、運悪く足を滑らせ母親がかけていた自殺用のロープに吊られることになります。父親の自殺もあり、一連の流れからドラマチックな物語が追加され、ユキヲの死は話題になりました。
ドライブインの皆も自殺だと思い落ち込みますがとある奇跡により間抜けな事故だったと思うことを決意します。
幽霊となったユキヲの過去の旅はここでおしまい。成仏して物語は幕を閉じます。


あらすじだけ書くと凄くシリアスな感じなんですけど、実際はこれにコメディ要素がだいぶ入ってるんですね。
この舞台はシリアスじゃなくてシリアル。悲劇らしいけどめちゃくちゃ笑える。

個人的面白シーン

【駆け落ち】

物語の序章。
ドライブインにいた二人、既婚の女性(クリコ)とおもちゃ屋の男性(ヤマグチ)は駆け落ちの途中でした。そこに駆けつけた女性の旦那さんが看板娘(マリエ)をスカウトした男性(若松)です。
女性は旦那さんと寄りを戻し、当て馬となったおもちゃ屋の男性は女性に復讐を決意し去っていきます。
男性は看板娘を芸能界にスカウトしマネージャーとなります。

ここのコメディ要素は女性の鞄の中身でした。
鞄から出てきたのはおっとっと、おっとっと、おっとっとと、小袋のおっとっと。
役者(谷原章介)の喋るテンポが非常に良かった。地味に良い声なのもじわじわくるポイント。

あとなにげに昭和感溢れるのもポイントだと思う。

【出戻り】

ユキヲの父親の自殺後、親子とマネージャー夫婦はドライブインに戻ってきます。
ユキヲの母親は精神的にやられており、マネージャーはマッサージなどで母親に尽くします。
このマッサージが、コメディ要素です。
出てきたのはぬるま湯と、まさかの

少年の母親の足を塩もみしてるんですね。真顔で真面目に。
高いところから豪快に塩をふりかけ揉み込んでいく(まるでも〇みち…)。大変シュールでした。
なんなんだこれ…


【伏線】

Ⅰ 駆け落ちの男
序章の駆け落ちシーン。おもちゃ屋の男性ヤマグチは当て馬として使われ、女性に捨てられます。その際、おれはねちっこいから忘れた頃に復讐しに来てやる!!と言って去っていきます。

ええ、ちゃんと伏線でした。

あとは当時は看板娘のマリエがとあるマジックを行い、その場に居た人たちを花まみれにしますがそれも別の伏線になります。

Ⅱ 恋愛話()と竹の花
地下に身を隠している祖父の、妾の子であるケイスケ。少年の叔父にあたるこの人はとある写真家と恋をしていると話します。彼女は幻の花を探して、また、一瞬の奇跡を探して色んなところを飛び回っていてどこにいるかもわからないと。
しかしそれは真っ赤なウソ。叔父の作り話だったのです。恋人に繋がらない電話をかけているというのも嘘で、実際は知らないおっさんに絡んでいるだけ。
なんとも虚しい男です。

ちなみにここで出てくる幻の花とは120年に一度咲くという竹の花を指します。
そしてその竹の花が咲くと竹やぶが枯れるというのです。
生きている間に一度見れるかわからないという竹の花、これは後々に重要な伏線となります。

Ⅲ とある種

たぶん、叔父?とバイトの女性の会話だったと思うんですけど、パイプのようなものでとある種を吸い込もうとしているシーンがあったんです。最初はパイプ煙草かなって思ったんです。江戸~明治時代とか、文豪がカンッてやっているようなイメージのあれ(もしくは銀〇の高杉さんが持ってるあれ)。
結局吸い込もうとして逆に吹いてしまった種を集めているところに人が来て種は元の袋とともに裏の竹やぶに捨てられます。これが伏線①。
追加で、空港の人怖かったねという会話。エミコが海外に一緒に旅行にいかせてもらったと言っていたのでその時の空港のことを言っているのでしょう。出入国したことないのでわからないですけど空港で怖いことなんてあるのかなという違和感はありました。これが伏線②。


【伏線回収】

Ⅰ 駆け落ち男ヤマグチ

ちなみに私は、この男のことをちゃんと忘れてました。序章でしか出てきてなかったことと、その後の展開が濃すぎたせいですっかり頭から抜けていました。しかしまあ、まれごと師の衣装が出てきてしばらくあと、ちゃんと復讐しにやってきたんです。

…総合格闘家になったムッキムキの体で。

ぶっちゃけ出てきたとき「誰だお前!!」ってなりました。後半もいいとこで新キャラ?と思っているとまさかの最初の男。
わかったときは驚きました。声が出せる状況だったら間違いなく「あーっ!!」と叫んでいたでしょう。

まあ十五年ほどかけた復讐だったにも関わらず、他の事件のせいで一瞬で終わりましたけど。
残念無念、最後まで残念な男性だったと思います。


ⅡとⅢ 竹の花ととある種
この2つは一緒に回収されます。
時間軸は少年が死んだあとの最後に近いシーン。

少年の葬儀後、ドライブインで皆で一息ついている頃。バイトのエミコが皆にお茶を入れます。そしてこのシーンから何故か祖父が普通に出てきてます。近所の人の目はもういいのか…?

それはそうと、その時のバイトの女性と祖父の会話がこちら。

「お茶どうぞ」
「おお、ありがとう。いい香りがするな」
「裏の竹やぶに草が生えてたんですけど、とってもいい香りだったので入れてみたんです」


おわかりですか?
裏の竹やぶに生えていた草=捨てられたとある種です。そのまま放置されて芽が出てきたんですね。

そして、また人が死んだと落ち込んでいる少年の母親マリエに、昔見せてくれたマジックがもう一度見たいと言ってせがみます(誰が言ったか忘れました)。

マリエはやるきのないままマジックを行いますが、仕込んでないため失敗に終わります。

否、終わる予定でした。

「仕込んでないんだから咲くわけないでしょ」

そう言って落ち込んだままの少マリエにバイトのエミコが叫びます。

「外!見てください!」

そこには竹の花が咲いていたと言うのです。
舞台装置としてはツリーの電飾みたいな小さな光がたくさん光っていました。

へえ、奇跡起きたんだ。と思った次の瞬間少年のナレーションがすべてをぶち壊し伏線を回収します。


「それは、本当に竹の花が咲いたのか、それとも全員がマリファナ入りのお茶を飲んだが故の集団幻覚だったのか今となってはわからない」



マ リ ファ ナ ?!




そして気がついた怒涛の伏線。

海外から持ち帰ったのはマリファナの種で、それを日本に持ち込むのにバレないか心配で空港の人が怖かった。
吸おうとしていたのもマリファナの種で、それを人に見つかりそうになったから慌てて袋ごと裏の竹やぶに隠した。
それから年月が経ち、生えていたいい香りのするマリファナをお茶に入れてドライブインの皆に配ったことで全員がマリファナを口にすることになった、というわけでした。


いや、濃いわ!!


まさかまさかの展開すぎて全力で笑いました。でも言われてみれば…と納得できる伏線で大変面白かったです。

単に奇跡が起こりました、で終わらないあたりがコメディだなと。自分が見に行く舞台はわりと王道が多いので新鮮でした。

【全体の感想】

今回はいつも行く博多座やオリックス劇場よりもこぢんまりした印象を持ちました。二階席でも舞台が近い。舞台自体もそんなに大きくなくて暗転はあっても舞台の大きな変化はなし。せいぜい壁の小物が変わる程度でした。舞台セットがくるくる変わる舞台しか見たことがなかったのでずっと同じ装置で話が進むというのはとても新鮮でした。
少年が自分を知るため過去を旅するという、物語の舞台がずっと同じ場所で進むストーリーならではではあると思いますがいつもと違って新鮮でした。

あとは話自体はシリアスなはずなのにちょいちょい挟まれる小ネタがとても面白くて、コメディとして話が成り立っていたのが面白かったです。題材で内容が決まるわけではないと思い知らされました。
二次創作の文字書きの端くれとしては非常に勉強になりました。
祖父が出てきた時の開口一番の「ジョニ黒注いでくれ」とか個人的にウケました。

私完全にコメデイだと思ってみてたんですけどこれ悲劇なんですね。レポ書くのに調べたときに知りました。基本が悲劇というだけであって全体としては喜劇に近いのではと感じました。あらすじだけ書いてると確かに悲劇でしたけど……

少し前に見に行った神州無頼街がおもしろかったなら、と父親がノリノリで取ってくれた公演だったのですが、また一風変わったストーリーと雰囲気でとても楽しかったです。



【今後の予定】

しばらく更新が止まっていましたが少しずつ再開できたらと思います。
とりあえず神州無頼街のレポ、それかららぶフェス2022現地参戦~肥前にすっころぶ~の二つを書けたらと思います。

九月にはミス・サイゴンも見に行くのでそれまでに今までためていたレポが公開出来たらいいなと思います。

それではまた、次の記事をお楽しみに。

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