記憶の顛末

駅前に屯している皆の顔を私は知っている。
あの人は、小学の幼なじみ。あの人は小学の将棋部の子。あの人は中学のバスケ部だった人。あの人は中学の生徒会長。あの人は高校の風紀委員。あの人は高校のサッカー部のキャプテン。

雪がしんしんと降り積もっていて、久しぶりの故郷はとても寒いなと思った。

皆、好きに喋っている。
昔のことや現在のこと。

恋人ができた。結婚をした。
大学に入った。大学を辞めた。
就職をした。会社を作った。
会社を辞めた。会社を潰した。

皆、私のことを覚えているだろうか。

「皆、久しぶり」

皆、私のことを忘れていないだろうか。

「皆、元気にしてた?」

「あー、縺九↑縺じゃん!元気!元気!」
「縺九↑縺さん、久しぶりだねー。中学振り?」

「うん。そうだね。」

良かった。皆、私のこと覚えていてくれたみたい。皆、顔や形は変わってしまったけれど、子供の頃から、内面は変わってないみたい。

成人式が終わったら、皆でお酒を飲もう。

―――――――――――――――――――――――――――――

「ねぇ。皆、あの子誰か知ってる?」
「いや、わからん」
「不気味だよね~。私たちのこと知ってたみたいだよ?」
「なにそれっ?怖いねー」

―――――――――――――――――――――――――――――

朝、目が覚めると頭がズキズキと痛むのに気づいた。昨日はお酒で飲んでいたのだろうか。昨日のことを思い出せなかった。

「かなこさーん、かなこさん!」

「えっ?」

「えっ?じゃないですよー。かなこさんにお手紙ですよ?」

「あっ、はい」

「良かったですね。かなこさん。成人式ですよ。一生に一度の大事なイベントですよー。」

「はぁ、そうですね。」

「今日の夕方からみたいですね。行ってみたらどうですか?」

「はぁ、そうしてみます。ありがとうございます。」

―――――――――――――――――――――――――――――

さっきの人、誰だっけ。

それにここに書いてある住所どこだろ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?