歌を作った日

花が咲くように、彼女の笑顔は僕を照らしてくれる。

下校途中で聞かせてくれる君の無駄話は大好きだ。

僕の鼓膜を撫でてくれる。

君の声を聞くと、僕のアドレナリンが大量に放出され

僕の身体一つ一つが君の声を感知するアンテナとなる。

僕を繋ぐのは君だけ

君だけなんだ

それだけで充分だった

ある日の夜、君からメールが届いていたから、受信欄を眺めていると、僕の寝ていた時間に一通の受信履歴があった。
君からのメールは珍しく、心臓がちょっと高鳴ったような気がした。
君からのメールはいつも読んでいて楽しかった。

メールのタイトルは、いつもと変わらず「無題」だった。

タイトル 「無題」

本文
おはようございます。
前置き無しで、申し上げたいことがあります。

単刀直入にいいます。

今日、私は死にます。
何時に死ぬかは自分自身にも分かりません。
車で撥ねられて死ぬかもしれません。
看板が風に煽られて下敷きになって死ぬかもしれません。
はたまた病気かも。

今私の発信したこのメールが、あなたのメールの受信欄の1番上に来ている頃、あなたは、きっと寝ていることでしょう。

私はわざとこの時間にこのメールを送りました。

このメールは遺言です。
このメールは遺書です。

あなたがメールを開くのはかなり遅いのは、私がよく知っています。

さすれば、最近お会い出来ていない代わりとして、このメールを私の最後の記録として残して頂きたいのです。

いつも私の下らない無駄話を聞いて下さり、とても感謝しております。
あなたが話を聞いてくれるというだけで、なんと幸せなことでありましょう。

いつもありがとう。

そうなのですけど、あなたのことです。きっと今まで私が話した話を全て録音してらっしゃるのでしょう。

時おり、あなたの方から謎の機械音が耳に届いていましたからね。
私はわかっているのです。

あなたは私のことが好きで好きでたまらない。

こんな嬉しいことがありましょうか。

ですが、盗聴は残念ながら犯罪ですのでね。一つ、あなたに罰を与えましょう。

録音した私の声で歌を作ってください。

私のことが好きで好きでたまらないあなたでしたら、きっと可能でしょう。

いつも私に付き合ってくれたお礼と、私からの初めてのプレゼント兼盗聴の罰です。

いつもありがとう。

君からのメールを読んだ次の朝から僕は、音楽を作り始めた。

伴奏を作り、君の声を歌詞に載せた

初めての経験だった。

君がいなくなったその日から、僕のそばにはいつも君がいてくれた。

もちろん、今もきみがいてくれている。

今日は発表の日だ。

タイトルは

「君のいない帰り道は忘れた」

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