巡り合わせのこと

エルトン・ジョンが特別好きな訳ではなかった。
でも小さい頃から休日になると家の中でよく流れていた。
父の趣味だ。
だからラジオから流れる彼女の歌を聞いた時、すぐにエルトン・ジョンの曲だと体が反応した。
声の主はレディ・ガガだった。

音楽は好きな方だと思う。
移動中、ぐっと集中して文章を読む以外は常に何か聴いているし、キッチンに立つ時はスピーカーで、それ以外でも隙あらばイヤホンを耳に突っ込んで何か聴いている。
でもどちらかというと洋楽よりは邦楽を好んで聴いているように思う。
だから彼女の歌うYour songを聞いた時、なんで彼女がこれを歌ってるんだろうというただそれだけで、なんとなくインターネットで調べただけだった。

調べてからその歌をダウンロードし、ループして聴くようになるまではあっという間だった。

レディ・ガガに対して特別な思い入れも無かったし、むしろ「奇抜なファッションのシンガー」程度の認識だった。
でも何かに惹かれてダウンロードした彼女のYour songは美しくて、力強くて、何よりとてつもなく格好良かった。
「凄いシンガーだったんだこの人は」という思いで何度も何度も聴いた。
何度も何度も聴くうちに、歌詞の中の単語を拾って何となく意味を想像した。
英語が得意ではない私は、歌詞の和訳を検索したりもした。
幼少期から何度も聴き流していた歌の詞を調べたいと初めて思わせたレディ・ガガ凄いなぁなんて思いながら。

でも、歌詞を調べて読むうちにこの歌がとても美しい歌なんだと知った。
ただ自分の強い思いを叫ぶラブソングではなくて、ものすごく相手を思いやっている本当の愛の歌だなぁと思った。
彼(彼女)は謙虚で、拙くて、恥じらいがあって、でもものすごく幸せなのだ。

“How wonderful life is while you’re in the world”
歌詞の中で一番好きな、私的キラーセンテンス。
「君がいるこの世界はなんて素晴らしいんだ」
ではなくて、「君がこの世界にいる人生はなんて素晴らしいんだ」というところになんともぐっとくる。
この世界が素晴らしいなんて壮大な話ではなくてあくまで素晴らしいのは君といる僕の人生なのだ。
謙虚な純粋さに何度聴いてもぐっとくる。

幼少期の記憶と素晴らしい歌唱と美しい歌詞。
この歌に出会って、時間を超えたこの巡り合わせになんだかとても自慢したいような共感して欲しいようなとにかくとてもいい気分なのだ。

ちなみに、色んな人の歌詞の和訳を読んだけれど、
“I hope you don’t mind” を
「気に入ってくれるといいんだけど」
と訳していた方の感性もとても好きだ。