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note クリエイティブ革命 -つながる創作-

 noteで今、クリエイティブの革命が起きている。それがどんなものなのか、あるひとつの企画を通して伝えたい。

 『才の祭(さいのさい)』。この企画はあるひとりのnoter、PJさんの頭の中で生まれた。
 『ふたりの愛』をテーマにした小説を公募し、その小説を元にした歌詞を募集。歌詞から作曲をしてクリスマスソングを創る。発表形態は映像で。少し複雑だが、要は創作リレーをしてクリスマスソングを創りたいということ。作曲活動をしているPJさんならではの企画だ。

 彼は2021年4月にnoteを始めてから、このフィールドにたくさんの才能があることを知り、「その才能を掛け合わせたらどうなるのかなぁ」と常々考えていたそうだ。
 その話をnoter仲間のかっちーさんに相談したところ、「面白そうだね、スタッフ声かけしようか?」と返答が。ここから企画が走り出す。

 noteという場所では、ユーザー個人が主催する大小様々なコンテストや募集企画が多く開催されている。それは利益を求めるような商業的なものではなく、ユーザー同士の交流を目指すものが多い。
 ただ自分の作品を発表するだけでなく、多くの人に見て読んで聴いてもらい、コメントをもらい、共感し合う。自分の内面を曝け出した表現を通じて交流することは、日常生活のコミュケーションとは違う深いつながりを感じることができる。誰かにわかってほしい。つながりたい。それは人間の本能だ。

 PJさんとかっちーさんの声掛けや公募でスタッフが集まってきた。

・プロデューサー:かっちーさん
・作曲担当:ジユンペイさんPJさん
・ボーカル:こよみさんソーダ・ヒロさん
・映像担当:ミムコ(私)
・審査員:riraさんxuさん
・広報:はやしっぷさん
・イラスト:しろくまきりんさん

本格的なプロジェクトチームだ。

 多くの人は不思議に思うかもしれない。顔も知らない人からの無償依頼を受ける人がそんなにいるのかと。それがいる。それだけnoteという場所のつながりは深い。

 ここで面白いのは、プロも混じっているところだと思う。ジユンペイさんはプロのギタリストで音楽を仕事としているし、私も映像は本業ではないけれど、イラストレーターの仕事をしている。xuさんもライターだ。私たちは通常『つくること』でお金をもらい生活している。でも、無償で受ける。面白そうだから。

 企画の進行はTwitterのグループチャットで行われた。昼夜問わず飛び交うコメント。白熱する議論。そのスピード感と熱量は、経験したあらゆる会議を上回ったと思う。誰かが意見を求めれば、すぐさま返ってくる。仕事を振ると風のはやさでやってくれる。鋭い意見があれば、フォローが入り、冗談も言い合う。こんなことを一日中、ずっとやっているのだ。
 こんな濃厚な時間を仲間と過ごしたことのある人は、どれだけいるだろうか。しかも。年齢も職業も住む場所もみんなバラバラ。それぞれの生活を送りながら、こんなやり取りをしている。
 ボーダレス・クリエイティブ。日常のすぐ横で起きているこの革命を多くの人が知るべきだと思う。

 小説の公募が始まると、次々応募作が集まってきた。応募総数は130。
 企業のコンテストと違うのは、交流を目的としているとろこにある。広報のはやしっぷさんが中心となって集めてくれた有志のメンバーが投稿後すぐにコメントを入れにいく。参加者全員に参加してよかったと思ってほしい。そんな思いからだ。
 審査員のriraさんとxuさんは応募作を毎日毎日、何作品も読む。長いものもあれば短いものもあるが、それぞれの生活を送りながら130もの作品を読むのは並大抵のことではない。

 130の小説の中から大賞が決まった。
 ちょこさんの『「もう好きじゃないよ」ってどういう意味?』という作品。クリスマスに起こる恋人とのすれ違い、後に用意されたハッピーなどんでん返し。心温まる愛おしい物語だ。
 ここでもnoteならではの交流が起きる。結果発表の記事には、選ばれなかったことへのネガティブなコメントはない。参加して楽しかった、ありがとう、と入れてくれる。大賞に選ばれたちょこさんのところには、お祝いや作品を褒め称えるコメントで溢れる。
 この時のちょこさんの気持ちを彼女の記事から引用させていただきたい。

"私は前にnoteでアカウントを持っていたけどやめてしまったという経緯がある。うまく書けないだとか、閲覧数がよくないだとかいろいろ理由はあるけれど、一番の理由は「友達ができない」ということだった。"


しかし、彼女はまたnoteを始める。「自分が書いたものをどこかで発表する機会があってほしいという思いが捨てきれなかったから」だそうだ。

そして、『才の祭』小説大賞に選ばれた。

"確かに小説自体は趣味でたまに書いたりはしていたけど、ほぼ鳴かず飛ばずの状態だったのでこんな夢みたいなことが起こるなんて思っていなかった。

これだけお祝いのお声を掛けて頂けたり、感想を頂いたのも初めてだった。

嬉しくて嬉しくて、涙がこぼれた。"

※引用元のちょこさんの記事


 この大賞に賞金はない。でも。ちょこさんの作品から感動が生まれ、交流が生まれた。それがちょこさんの嬉し涙になり、そこにまた感動が生まれ、交流がつながっていく。私も嬉しかった。

 企画はまだ終わりではない。次は、ちょこさんの小説からの二次創作。歌詞の公募だ。歌詞は彼女と彼、それぞれの視点での募集。
 初めて作詞にチャレンジした、という人も含めてまた多くの作品が集まった。選ばれたのはこの2作。

彼女視点:
『snow globe -スノードーム-』taisashiさん

男性視点:
『クリスマスの花束』cofumiさん

 それぞれ、元の小説の世界に新たな感性がプラスされた素晴らしい歌詞だ。

 実はnoteの世界に足を踏み入れた時、アマチュア同士の二次創作が盛んに行われていることに驚いた。創作に他者から手を加えられることをクリエイターは嫌がるという意識を持っていたし、自身の手を離れてイメージする完成と違う形になることへの違和感があった。
 しかし、すぐに気がつくことになる。そんな考えは古いのだと。交流し、変化していくこと。計画通りに完成品を作るのではなく、経過そのものが今のクリエイティブなのだと。

 ここで起きている二次創作をnoterたちは『コラボ』と呼ぶ。感性が上乗せされていくことを楽しんでいる。この企画で生まれた2つの歌詞もそうだ。
 次はPJさんとジユンペイさんがそれぞれの歌詞に曲をつけ、ボーカルのこよみさんとソーダ・ヒロさんが歌い、しろくまきりんさんのイラストを使って、私がMV(ミュージック・ビデオ)を制作する。感性が幾層にもなる。

 MV制作の私は、この創作リレーのアンカーである。受け取ったバトンはズシリと重く、緊張で心拍数が上がりっぱなしだった......。
 普段の仕事だって、たくさんの人が関わっているし、依頼したものをまとめる仕事だってしてきた。でも。初めてこんなに重く感じた。たくさんの人の思いと期待をリアルに感じたのだ。この作品に関わったすべての人の思いに応えたい。そう思った。

 こうして完成した作品がこちら。


 私は応えられただろうか。このバトンをつないでくれた人々に。応援してくれた多くの人に。そうであってほしいと願う。心から。

 期待されること、夢中になれること、誰かと共感し合うこと、応えたいと思うこと。そのすべてに「ありがとう」と感じること。個人では出来なかったいくつもの体験がここにある。日常生活のすぐ横に、その手にあるスマホの中に、未知の冒険が待っている。踏み出すかどうかはあなた次第だ。

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