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妄想レビュー返答

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こちらは、企画「妄想レビューから記事」の返答をまとめたマガジンになります。 企画概要はこちら。 https://note.com/mimuco/n/n94c8c354c9c4
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2022年10月の記事一覧

【ソファーの下の浜辺】前編#妄想レビュー返答

■■■ 弟の部屋のソファーのカバーが深い青色になったのは、僕の夏休みが始まる少し前だった。 僕はずっとお祖父様と、弟はお祖母様と暮らしていた。 お祖母様が亡くなって、弟がこの屋敷に来たのは去年の秋の終わり頃だった。 弟は僕よりも2歳年下だけど、とても小さくて、体もあまり丈夫じゃないようで、ここに来てから春になるまで、ほとんどベッドの上で過ごしていた。 暖かくなってようやく一緒に本を読んだりできるようになった。弟は笑うととても可愛いけれど、あまり口をきくことはなかった。 学校

【続・ソファーの下の浜辺】#妄想レビュー返答

■■■ 海が消えた部屋はなんだかとても味気なく思えた。 ソファーの下を覗いても、手を伸ばしても、もう海はそこにはいなかった。 僕と弟はいつかあの海を探しに行こうと約束した。 僕たちの部屋には、拾った貝殻も、救った白い砂も、転げて出てきたあのボトルもある。だからあの海は幻なんかじゃない。 ならばあの海はどこへ行ってしまったのだろう。 「おにいちゃん」 もうすっかり眠ってしまっていると思っていた弟がドアを開けた。 「どうした?眠れないのかい?」 その問いには答えず弟は言った

ミムコさん企画「妄想レビュー」より…いぬいゆうた:作『夜の笑い声』/朗読してみたよ

タイトルがわかりにくい! note内で無双の活躍を続けるミムコさん。つい先日は「縦スク文庫」なる新コンテンツも発表されるなど、世の一歩先を行く感覚の鋭さには舌を巻くばかりです。 私の「いぬいのラジオ(仮)」にも以前ご出演いただいたのですが、その時にラジオ内で朗読したミムコさん発の企画「妄想レビュー」に関連した自作小説をあらためて朗読コンテンツとして掲示いたします。 ちなみにミムコさんをお迎えした「いぬいのラジオ(仮)」はこちら! 聞き返してみると、改めて勉強になる部分が

ミムコさん企画「妄想レビュー」より #3返答『紅葉の季節』/朗読してみたよ

ミムコさん企画の「妄想レビュー」に返答作品としてワタクシ・いぬいゆうたが書いた『紅葉の季節』を朗読いたしました。 ミムコさんの妄想レビューはこちら! で、朗読はこちら!! 原作はここっ! 自分でも割と好きな作品なんですよね。秋も深まりを見せてまいりましたので、いまが朗読のチャンスかと(^_-)-☆ チャンネル登録、高評価、よろしくお願いシャース!!

【王来る】#妄想レビュー返答

僕らはカタッポスと呼ばれている存在。カタッポスはもともと「ふたつでひとつ」だったものが、その片割れと逸れてしまったものたちだ。 片割れと逸れ、且つ、持ち主にも忘れられている。それがカタッポスとしてこの世界にやってくる。 もしも相方が持ち主の手元にあって、ある日、部屋の隅--ソファの後ろや、引き出しの奥--にいるのを見つけて貰えると、カタッポスの世界から元いた世界に引き戻される。たまに忘れられたまま、相方が「片っぽだけになっちゃった」といって捨てられる時がある。相方もそれで生涯