子供の貧困問題について②
生活安全課員だった時に、万引きを繰り返すある中学生の少年と出会いました。
私が事件担当となったので話を聞くと、
「親が食事を用意してくれなくて、自分で調達するよう言われた」
とのことです。
かといってお小遣いを渡されることもないため、コンビニで盗むことを覚えたと言っていました。そして唯一の栄養源は給食だとのこと。
ある日友達の誕生日のお祝いに何か渡したいと雑貨屋さんで万引きし、発覚(こういった子は友達をとても大事にしたがります)。
そしてこれまでの万引きも自供することとなりました。
少年は、それらを終始淡々と無表情で説明していきます。
ですが、事件も多かったので何回かに分けて会ううちに、だんだんと心を開いてくれるようになりました。
とても頭のいい子だったのですが、自分の境遇も受け入れている様でした。
事件についての話とは別に、私は次のような話をしました。
・中学を卒業したらしっかり自立して自分でお金を稼ぐことを身に着けること(就職が決まっていたので)
・あなたがもし女の子だったら身売りに走っていただろうこと
・そんなことを大事な友達(誕生日プレゼントを渡そうとしていたのは女の子でした)にはさせないよう、自分が強くなること
・強くなるというのは、犯罪をしてもへっちゃらだと気持ちに蓋をするのではなく、守るべきものをきちんと守れるようになること
・これから大人になるけれど、捕まってしまったら守ったとは言えないのだということ
・もともと賢いのだから、生活を自分で立て直してこれからやっていって、応援してるから
なんてことを、折に触れて話していたら、向こうも最後の方は真剣な表情で聞いてくれました。
そしてこれで警察が話を聞くのは最後という日、家に送ってあげた際に、車が見えなくなるまで頭を下げ続けてくれていました。
その光景は今でも目に焼き付いています。
警察官はこういった未来のある少年とも一過性の関りしか持てないので、事件を書類にまとめ、家庭裁判所の判断が出たらおしまいです。
そのため、この子がこの後どうしていったかはわかりません。
親がネグレクトな家庭で育ち、自分なりに必死に生きていたのだと思います。
事件をきっかけに、少しは前向きに人生を歩んでくれたらと願って止みませんでしたよ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?