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刺繍をしよう、ミモザの花を

ミモザの切り花をもらった
枝からこぼれた花を拾って手のひらにのせる
ふわふわふわ
ふわふわふわ
そうだ、これはきっと黄色いケセランパサランだ。
窓が開いていたらきっと
にぎやかにおしゃべりしながら
風にのって空に飛んでいくだろう
でも今日は雨だ
黄色いケセランパサランたちは静かに眠っている
なにか楽しい夢を見ている

こんな静かな雨の午後は刺繍をすればいいのよ
知らない誰かがいうと
するすると黄色い光が流れてくる
光は糸になる
この糸は香りたかい蝋梅ろうばいから
この糸は雲の上のお日様から
この糸はカナリアの歌声から
少しずつ違う黄色を集めて
春の色になる
さあこれでミモザを刺繍しましょうよ
そういって雨の日の友だちが
たちまち私の爪に黄色いマニキュアをぬる
刺繍がすいすい進む、魔法のマニキュアよ
ほんとう!すいすいミモザの花が刺繍できる!
すいすい、すいすい、すいすい…

雨があがって夕日が弱く差し込むと
白いカーテンに散った、黄色いケセランパサラン
すいすい、すいすい、
私が刺繍したミモザ。



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