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夕焼け色の綿菓子

お祭りは一昨日終わったのに 道端に綿菓子のお店があった。
売っているのは 夕焼け色の綿菓子。透明な袋に夕焼けの色をした 綿菓子が入っている。
私は欲しくなった。
「ひとつください」売り主の野球帽をかぶったおじさんにそう言って1000円札を渡して夕焼け色の綿菓子を一つ手に入れた。そのとき私はとても悲しかった。 悲しかったというより やけになっていた。 いろんなことが嫌になって車の前に飛び出してしまう妄想するほど嫌になっていた。だから綿菓子ぐらい食べたっていいのだ、大人でも。
私は公園のベンチに座り、夕焼け色の綿菓子を袋から取り出した。
割りばしがついていない。手で袋から取り出すと綿菓子は、ふわふわと浮かび膨らんだ。 どんどん大きくなって 座布団より大きくなって、大きなクッションのようになった。
こんな雲が欲しかった。 こんな雲に乗って空に浮かんでみたかった。 私が乗ろうとすると 雲は少し低くなってくれる。私は雲の上にすわった。
雲は少しずつ 夕焼け空を目指して 浮かび上がっていく。 眩しい夕日に向かって 少しずつ進んでいく。 だんだん目が開けていられなくなる。 目を閉じても眩しい。沈む太陽を追って進んでいく、雲に乗って。
このまま夕焼け空に溶けてしまおう。

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