歩く蝉の幼虫
夜の散歩をしていると、歩道を蝉の幼虫が大急ぎで歩いていた。
私はいつも下を向いて散歩しているので気がついたのだ。
みんな下なんてみないで、走ったり、歩いたりしている。
こんなところを歩いていては
そういう誰かに踏まれてしまう。
私はとても心配になったのでしゃがみ込み
大きな枯葉を拾いあげ
彼(または彼女)の進行方向に差し出した。
急いでいる彼は迷わず枯葉の上に乗ってくる。
私はそおっと幼虫を落とさないように
その葉っぱを樹の陰に降ろす。
これでもう踏まれることなく
幹によじのぼって殻を脱ぐことができるだろう。
がんばってね。
私は声を掛けて立ち上がり
また、用心深く足元をみながら歩き出した。
夜の散歩道を歩いたり走ったりしているのは
人間だけではないのだ。
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