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さびしいですか、お嬢さん!

なんとなく、さみしいものが好きだ。
静かな雨の日とか、一人の夜の散歩とか、『亡き王女のためのパヴァーヌ』とか、ルドンの絵とか、萩原朔太郎の詩とか。
朔太郎の詩は呼びかける。
「さびしいですか、お嬢さん!」 (緑色の笛)『定本青猫』より
今に比べたら全く気楽だった二十歳のころ、この詩をときどき声に出して読んでみた。
朔太郎の詩ではときどき「お嬢さん」という呼びかけが出てくる。
お嬢さんと呼びかける詩が特に好きだった。
今の私はもう絶対にお嬢さんではない。
朔太郎の死んだ年齢だ。
でも二十歳の頃と同じように、少しさみしいものが好きだ。
何故いつもさみしそうなものが好きなのかは分からない。
ルドンの暗い絵が好きなのだと年上の友人に話したら
「病んでるわね」
と言われた。そうだろうか。
私はくよくよしているが、病んではいない気がする。
ただ、一人で、さみしい世界に浸っているのが好きなのだ。
さみしい世界はいつも静かで心も静かになる。
今朝もバロック音楽を聴きながらさみしい朝を愉しんでいる。

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