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かすみ草の刷り込みは

たまに訪れる農協の直販店で好きな花を買うのは自分に許可した楽しみだ。ほとんどの花はとても安くて、花屋では買えないような庭の隅に咲いているような花も小さく束ねられて売っている。冬の終わりに小ぶりな水仙、、春には菜の花、初夏には紫陽花、ストロベリーフィールド。それらは100円ほどで買える。
もうちょっと高い花もある。花屋で売っているような花。いろいろな種類の薔薇、蘭、デルフィニウム、大きな向日葵。枝ものも売っている。冬の終わりに蝋梅、梅、春には桜。
でも買いすぎてはいけない。そんなに飾る場所がないのだから。売り場をぐるぐる歩きながら慎重に選ぶ。今日は何を買おうか。紫陽花が欲しいな、うちには紫陽花が植わっていない。
でも目についたのはかすみ草。ふわっとまとめられたかすみ草が300円!安い…手に取ってうっとりする。かすみ草だけの花束、素敵…
でも。このかすみ草だけの花束が素敵と思うのは刷り込みだ。いつ誰に刷り込まれたかを思い出す。中学生の頃に読んだ新井素子の本の主人公がそんなことを言っていたのだ。それを読んで以来、私もかすみ草だけの花束がとても素敵だと考えるようになった。そう思い出すけれど本当だったかもう確信は持てない。50を過ぎてからは自分のどんな記憶にも確信が持てない。
こんなふうに細々した憧れが刷り込まれた10代の頃の読書。漫画のこともある。刷り込んだ作者は思いもしないことだろうな、と思いながら、かすみ草をみるたびに幸せだ。


*この記事を読んだ週末図工室さんが
お花を買って、書いてくださった記事です


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