見出し画像

母と朝焼け【エッセイ】【青ブラ文学部】

高い高いホテルの部屋から朝焼けを見た。
大きなガラス窓から下のほうを見下ろすとまだ眠っている駅と線路が見える。駅に近いホテルなのだ。
遠くに目を移して待っていると海に太陽があらわれ、空と海を照らし、街を照らし、見える風景が少しずつ控えめに朝に塗り替えられてゆく。
いつもなら眠っているような早い時間。
朝日がのぼるのを見たくて起きた。
しばらく一人で見ていたけれど、寝ている母を起こす。
母と二人でこのホテルに泊まったのだ。50代の娘と80代の母の二人で。
母にとって懐かしいこの街での同窓会に付き合って、一緒にきてここに泊ることにした。泊まらずに帰ることも可能な距離だったが、
駅から近いこの高層ホテルに泊まって、母に街の夜景や朝焼けを見せたかった。
食いしん坊な母はこの朝焼けよりも、美味しいホテルの朝食のほうを記憶しているかもしれない。
でも私は母とこの街の朝焼けを見たことが、なんとなく満足だった。


*一昨年ここに泊まりました。
父が亡くなって一年ほど過ぎた頃。
少し自由になった母を誘って出かけたときの思い出です。
ちなみに母は元気です✨

*山根あきらさんの企画に参加します


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?