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もしも、かぐや姫のように【青ブラ文学部】

もしも、かぐや姫のように、何人もの求婚者に難題をふっかけて良いのなら、私はそれぞれに本を一冊プレゼントしてもらう。
その中で、私が一番気に入った本を持ってきてくれた人を選ぶの。
または「あなたの一番好きな本を持ってきて見せて」って言うの。
それでその人がどんな人か、気が合うかどうか分かるでしょ?

そんなことを豪語していた私の姉・月子はモテる人だった。
でもそんなことを言うような人だったから、普通のアプローチにはなびかなかった、ように妹の私には見えた。
姉が結婚を決めて、見た目は思いのほか地味な男性を連れてきたので、私はかぐや姫のことを思い出して、何か素敵な本をもらったの?と姉に聞いてみた。
姉は自分で言ったかぐや姫と本の話などすっかり忘れていたので、私に「はあ?」とうるさそうな声を出した。私はがっかりした。
でも兄になる人のほうに直接「一番好きな本は何ですか?」とたずねてみた。
地味で人の好さそうな未来の義兄はおっとりした様子で「う~ん…」と考え、「一番は決めれないなあ」と答えてにっこりした。
「好きな本が多すぎるから」と言い添えた。
そうだよね、私だって一番好きな本が何かを決めるのは難しい。
私はその義兄予定者に好感を持った。
「星子ちゃんは読書が好きなの?」
「はい。」
「じゃあ今度何か本をプレゼントするね」
そういって次に会った時、可愛いたんぽぽの表紙の短歌の本をくれた。
なぜ短歌の本?と思ったけれど、短歌を作ってみる気になった。
そう言うと彼は嬉しそうな笑顔になった。可愛い笑顔だった。
「そうだよ、ぜひ作ってみて!」
そして、僕は君のお姉さんを短歌で落としたんだ、と小声で教えてくれた。でもどんな短歌かは聞いても教えてくれなかった。
それは二人のひみつの宝物なのだろう。宝箱の中にたくさん入っているのかもしれない。姉はやっぱり文学好きなんだな、というのもちょっと嬉しかった。
よし!私も誰かの心を掴んじゃうような短歌を作れるようになろう!
お義兄さんに教えてもらおう!

 歌詠めば
 気持ちは花や星になり
 花束になり流星 りゅうせいになる


(了)


山根あきら/妄想哲学者さんの
短歌物語│青ブラ文学部に初めて参加させていただきます
山根さん、よろしくお願いします。


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