藤棚のベッドで眠りたい
夜の公園に、どこまでもどこまでも藤棚が続いている
高く低く細く広く、藤棚には藤が咲き流れている
長い藤、短い藤、薄紫の藤、濃い紫の藤、白い藤、ピンクの藤
風のある日はいいけれど、全く風のないしんとした夜に一人で
こんな藤棚の下を、上を見上げながら歩いていると甘い匂いを吸い込みすぎて、どんどんどんどん寂しくなって
少しずつ足が地面から浮き上がる
ほら、今もう0,001ミリ、靴が地面を離れているよ
おかしいね。藤を垂らす重力で地面へ押し付けられるべき。
なのにふわっという音もなく、ほんの少し浮いている
あと0,0001ミリ地面から離れてしまったらもうだめだね
あきらめて藤棚の上まで浮かんで藤棚をベッドにして眠ろう
朝、熊蜂が起こしてくれるまでそこで眠っていよう
きっとまた風邪をひいてしまうけど藤棚のベッドで眠りたい