増えた幼馴染【シロクマ文芸部】
振り返るとすぐ後ろにいた幼馴染のリリちゃんが微笑んだ。
「どう?ミモちゃん。たくさん拾えた?」
私は茶畑の間にかがみこんで、お茶の実を拾っていたのだ。冬になって白いお茶の花が咲くとどうしてもお茶の実を拾いたくなってしまう。
私はリリちゃんにこくりとうなずく。
待たせてごめんね、ありがとう、という言葉が喉でつかえて出てこなくて苦しくなる。
でもリリちゃんは気にしない。
私がだまって差し出した手の上のお茶の実を一つ、つまんで自分の手ににぎる。
「一つもらうね」
私は笑顔でうなずいた。
「軽くて丸いね」
リリちゃんは大事にポケットに入れた。
その様子をみて、私は残ったお茶の実を、他の大切な私の幼馴染のチャイちゃんやいくちゃんにもあげようと思い、遠くにいる友達の理恵ちゃんからもらったアリスのハンカチに丁寧に包み、スカートのポケットにしまった。
明日学校に持って行って、明るくて冬の日差しが暖かい教室で渡そう。喜んでくれるといいな、きっと喜んでくれる…
日向ぼっこでうとうとしながら、夢をみるでもなくそんな光景がうっすらと浮かぶ。
今年びっくりしたこと。
大人になって、50代になってから、さかのぼって幼馴染が増やせるのだ。遠い昔を思い出すときに新しくできた幼馴染がするりと入り込んで思い出がきらきらする。
リリコイさん、chaiちゃん、ikueさん、ありがとう。
まだこれからも増えそうでどきどきしている。
*リリコイさんは長いのでリリちゃんとしました✨
(了)
*小牧幸助さんの企画に参加しています。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?