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カズオ・イシグロ『忘れられた巨人』土屋政雄訳、早川書房

長かったです。ほんとうに長かった……。途中で何度やめようと思ったことか。最後までなんとか読んだ自分を褒めたい。

寝る前に読む本としてこの本を枕元に持ってきたのは、あれはいつのことだったのか…(遠い目)。それから3ページ読んでは眠りに誘われ、2ページ読んではあくびをし、1ページ読んだだけで即、寝落ち。という夜がつづいた。ただでさえ寝つきの良いわたしである。その上に、この小説、なんだかわけがわからん。大昔のイギリスで、老夫婦がある日、「息子に会いに行きましょう」と旅に出るのだが、その旅の道中のできごとが事細かく説明される。でもちっとも面白くない (´;ω;`) だんだん読み方も雑になり、ついにはブックマークし忘れて、どこまで読んだかわからず、数ページもバックしてしまう。それでもしばらく気づかない。どこまで読んだか覚えていない。10ページ前も後も大して変わらない。いったいこれはどういう旅なのか。読むのがすごく辛い……。

途中、「戦士」と呼ばれる男や、謎の少年が出るが、ついにある章ではアーサー物語の騎士、ガウェインが出たところで、「えーっ!」と叫ぶ。いったい全体これは何の小説なのか。ガウェインと老夫婦はどういう関係?そもそも息子を訪ねる旅はどうなったの?

正直に告白しますと、あまりの退屈さに斜め読みした夜もけっこうありました。けっして正確には読んでおりません。そんなダメなわたしがかろうじて掴めたあらすじはーー:老夫婦はブリトン人。最近、人々がどんどん過去の出来事を忘れているような気がしていた。夫婦も息子を訪ねようとするのだが、息子がどこにいるのかもわかっていないみたい。旅の途中でサクソン人の戦士と少年エドウィンと会う。戦士は竜を探している。つづいてガウェインに会う。アーサー王の有名な臣下だったが、老いぼれた馬に乗る老いぼれた騎士になっている。彼はブリトン人。彼も竜を探している(?)。どうやら人々が記憶を失くしているのはこの竜が原因らしいのだ。(と、ネタばれはここまででやめておく。)

つまり、この時代のイギリスはブリトン人(やさしい?)とサクソン人(荒々しい?)が同居していて、まずまず平和に暮らしているのだが、それも竜の息のために昔の敵対心を忘れてしまったため。竜がやっつけられると、人々は記憶を取り戻し、この国の平和は壊されるだろう…というような話。いったい、争いのあった過去を覚えていた方がいいのか、忘れた方がいいのか。

ちょうど同じ時期に谷川俊太郎が「自分が幼いときも戦争だったし、いつの時期も戦争はあった。これからも戦争はなくならない」というようなコメントをしているのを読んで、少々驚いたのである。未来に向けて争いはなくそうというのが、少なくとも建前としては真っ当な態度ではないのか。そして、過去を忘れず、歴史を勉強しようというのが共通認識じゃないの? それなのに、この小説では最後はどうやら人々の記憶が蘇り、アーサー王たちに虐殺された方のサクソン人がブリトン人に復讐するらしい。まったく希望のない終わりではないか。

(とにかく眠くて読み飛ばしたところも多いので、良い子のみなさんはちゃんと読んでくださいね。あと、アーサー王物語って、昔いちおう読んだんですけど聖杯を求める話だったはずだが、サクソン人を虐殺したのか?)

いやまぁとにかく長い小説でした。もちろん老夫婦も昔の記憶を取り戻していくんですよ。そこはちょっとメロドラマ的。それにしても辛い読書でした。わたくし、もうしばらくはイシグロを読みたくないです。とほほ。




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