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長嶋有『タンノイのエジンバラ』文藝春秋

長嶋有は「猛スピードで母は」など読んだけどそれほど印象に残っておらず、「ジャージの二人」を読みかけたのだが、家でジャージを着てだらだらしている話(だと冒頭を読んで思ったけど、そうじゃなかったのかもしれない)があまり食指が動かずに読むのをやめた。それ以来だ。しかし今度のは意外にもわりとよかった。親きょうだい親戚隣人などの地味でわりとありそうな話が多く、素晴らしくもなく、かといってそれほど悲惨でもない、そのふつう具合が良かったのだ。会社社長だった父親がむかし愛人を作って両親が離婚、そのあと愛人と結婚して暮らしていた父は癌で死ぬのだが、その間際にまたも愛人が登場したりする(「夜のあぐら」)。すると遺産相続がややこしくなるわよねぇ。わたしはそういうことを考えるのがすごく面倒だ。この本のいろんな中編には、そういう、そんなに異常じゃないけどちょっと面倒だなと思えるようなシチュエーションが描かれていて、読みながら「ああ、人生だわねぇ」とぼんやり思う。これから自分にも何が起きるのかはからないけど、できるだけ面倒は避けて簡単に生きたい。金庫とかグランドピアノとか、大きいもの、重いものは持ちたくない。そんなことを思ったのでした。
(ひっそりと3日連続投稿)

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