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5/8:「回復楽しいィィィ」期

5:「回復楽しいィィィ」期

さて、ようやくここに来ました。
回復について調べたり試したりプログラムをやったり、心理療法を受けたりしてるうちに、それ自体が楽しくなってくる時期です。
ここにくると、自分の病気や人生のどうしようもなさよりも、自分の変化が面白くてしょうがない気持ちが勝ってきます。
新しいことを知って、少しずつ実践してみることで、現実が少〜〜しずつ変わる実感が持てるまあす。精神的な自己成長を楽しめる時期です。

色んな意味でハイになりすぎる

このときは色んな意味で、非常に気分がハイにもなりやすかったです。「できたー!」「わかったー!」「やったー!」の繰り返しで報酬系がめちゃくちゃ刺激されていたので……(照)
「楽しく回復を目指せる」と聞こえはいいですが、調子に非常に乗りやすい時期でもあります。

聞かされる側の気持ちよ

まず、「回復したかも〜〜!!」とアゲアゲテンションで自分が安定期に入った勘違いを、何回したことか……
私はこの時期に入ってから本当に安定するまで

私は回復しました」→何かしらのスリップとトラウマの発生→落ち着く→「私は回復しました」→……

これを20回は繰り返しました。逆に言うと、懲りずに20回も「私は回復した!!」と人前で言えるぐらいにはハイでした。
「回復しました!」というたびに、すでに安定しきってる人には「ああ……うん……よかったね……(お察し)」と生暖かい目で見守られました。もう思い出すだけで恥ずかしい。それでもずっと関わってくれてた自助グループと、周囲の皆さんには足を向けて眠れません。

とはいえ、私の場合は自助グループにいたので、一般の人には到底理解できない話を話せることは救いでした。
同じ経験をしてる仲間の話を聞いて「わかる…わかる…」と学びが非常に多かったですし、12ステップグループでは濃ゆすぎる学びもぐんぐん吸収できました。
ステップのこれこれがわかったとか、学びを得たとかで毎日楽しかったのを覚えています。それも拍車をかけてたのでしょう。

12ステップは宗教ではありませんが、それをやっている私の姿を見て、12ステップは変な宗教だと思われそうなぐらいに、当時の私はとてもテンションが高かったです(恥)

人に押し付ける時期でもある

そもそも、根本的な問題である自己肯定感が低さがまだ解決してるわけではないので、どうしても「こんな大変なことをやってる自分だから偉いでしょ?」という気持ちがあったのは否めません。まあ、実際は本当に頑張ってたし、そう思うこと自体何も悪くないんですが。

ところが自己肯定感が低すぎると、回復という作業だけが、自分の支えになってしまう。
そして自己肯定感の低さゆえに、無意識に自助グループで「回復」を競ったり、12ステップのスピードや理解度を競ったり、周りの人に「こんなことをやった(ドヤ)」と自慢するようになるのも大体この時期…書いてて恥ずかしくなってきた。

頭の中が「回復」でいっぱいになりすぎて、仕事中も「回復とは…」映画見てても「12ステップに沿った作りになってる…」とか、わけわからないことを言い出してました。落ち着けよ。

それを一人で楽しんでるだけならいいものの、どんどん頭が回復に支配されて、自助グループでどうしても12ステップやACワーク、自分の良かったことを押し付けがちです(性格もあるかもしれないけど)

自分はやりきってないのに人に押し付ける図

それだけならまだ可愛いのですが、次第に「この人はまだ回復してない」「この人の問題点はこうだ」となぜか偉そうに心の中でジャッジが始まります。知識を持って人をぶん殴ったりします。普通に迷惑で草。

なぜならこの時期は「新しいことを知る楽しさ」が先立ってしまって、自分自身の問題を客観的に知る段階。
回復に夢も見れるし、自分にも夢が見れる分、自分の至らなさは目に入らないから楽しかった。


地に足がついてない

この時期のポイントは、「自分の足元をよく見よう」です。
私の場合、新しいことを知るのが楽しくて、ついつい本など読み漁ったり、回復とはなにか…みたいな理論を入れまくりました。この時期だからこそ入れられました。
そしてたまに専門家が読むような本を読んでは「エビデンスが云々…」とか言い出したりもしてました。恥ずかしすぎて土に埋まりたい。殺してくれ。

依存症やトラウマに限らずでしょうが、人間は知識が入ると自分は回復した・素晴らしい人間になったとか、謎の錯覚に陥りやすいです。
知識は力です。
だからこそ口先達者になるだけで、現実で相手を圧倒することができる。そして理想論を語るだけなら、本当に誰にでもできる。簡単なんですよ。知識で人を殴るだけなら。

でも、知識が入ってることと、自分が変化してることは全く違いました。
特に私は処理系IQよりも言語IQが高かったせいか、「口先は立派なんだけど行動や経験がともなっていない」が多発しまくりでしてね…ははは(白目)

回復には問題解決のために、ある程度の知識やIQが必要になると経験上考えています。だから、私は知識が入る漫画を描いていますし、知識は入れてて損はしません。
しかし、それだけでは足りない。なぜなら理論で自己肯定感の低さは解決しないのだから。


課題は「現実世界での実践」

というわけで。
ヒートアップしたバランスをとるために「実践」を意識するといい感じになるのかな〜と、振り返って思うわけです。
当時私は12ステップやACの本を大量に読みましたし、仕事の依頼もあって知識が身につきやすい環境でした。

わざわざ自分が傷つけた人のリストを作るなんてクレイジーだぜ

でも理論とは全く別に、12ステップをすることやACのワークを現実で実践することの、辛いこと辛いこと。

謝罪をしにいったときは死ぬかと思ったわ。

本を読むのは比較的簡単なのですが、現実世界で自分の行動や人間性が変化するまでには、それ相応に時間がかかりました。
試行錯誤して「経験」を積み重ねないと、自分自身に変化は訪れないんですよねえ…。知識は、どの方向に向かって行動するか催促するものですからねえ…。
最初に知識を身に着けすぎたからか、「私の考えた理想の回復者」と現在の自分のギャップで苦しむことになりました(笑)

知識だけが身につくと、「他人のここが足りていない」と、偉そ〜〜〜〜に目についてしまうのですが、実際に行動をすると「本当に変えなくてはならないのは自分自身だった」と痛感したものです。
そういう痛〜い経験を積み重ねて、ようやく「理想の自分」ではなく「現実の自分」が本当にちゃんと見えて、受け止められるようになったんですね。

知識や本、一方的な情報に逃げて自分の世界に閉じこもるのは簡単。
そして自分の意見や正しさを一方的にぶつけること、コントロールすること、あるいは一方的に従い続けることも簡単です。

本当に難しいのは、自分と相手にとっても、いい対人関係を作る努力。
それに向き合う勇気を出すこと。
現実にきちんと向き合って、すぐに結果が出なくても積み重ねる堅実さのほうがずっと難しい。

それができないから、いつも誰かを恨んで、あるいは神格化して、簡単に出てくる結果をほしがって、何かに依存することしかできなかったんだな〜〜〜と学びがありました。
そうしてるうちにゆっくりと地に足がついて、次のステージに進んだ気がします。

それでも思い切ったほうがいい

さて、中二病を患っていた自分を思い出すように、当時の調子に乗っていた自分を思い出しながら色々と書きました。
自律神経が調整できない間は、どう頑張っても白黒思考になってしまうACに、このニュアンスを伝えるのは本当に難しいのですが……

いいんですよ!この時期は調子に乗って。
このゾーンに入ったら、あなたの思うままに、いけるところまでいっちゃうのが吉です。

過去の治療中の私がこの内容を見たら、「調子に乗ってるかもしれない」「地に足がついてないかもしれない…」「それはよくないことだ…」と、正しさで自分を縛って、落ち着いたふりをして「私の考えた最強の理想の回復者」を演じていたでしょう。

でも、本当にやめなくてはならないのは、そういうところでした。
正しいことで自分をコーティングして、本当の自分を否定することをやめなければ、根本的な苦しさの解消にはなりません。

回復や前進が嬉しくて楽しくて調子に乗ってるなんて、可愛いじゃないですか(笑)
それにこの時期、思いっっっきり調子に乗ってたからこそ、かなり知識が吸収できましたし、回復の後押しになったのは間違いありません。

そして今だからわかるのですが、回復のプロセスの中で気持ちの一番のピークはここです。
このあとは緩やかに落ち着いていくだけですから、いい子ぶらずに、アゲアゲの気分でいることをおすすめします。



補足:無理して前向きにならなくても大丈夫

ここからは補足です。前向きになれないだけどうぞ。
正直、この期間に突入できると、もはや回復は約束されてるようなものだと思っています。
回復に限らず、どの分野でも楽しんでやれる人が一番強い。
どんな手段であれ、いちばん大事なのは「本人が回復したい気持ち」だと今も昔も思っています。

でも「こんな地獄みたいな苦しみで、そんな前向きになれねえよ…」という方もいらっしゃるでしょう。または、「前向きにならないとダメなのか…?」と思われるかもしれないので、補足しておきます。

私も自助グループには5年ほどしか入ってないので、はっきりとしたことは言えませんが……このゾーンに入る人を何人か見てきて、ちょっと法則を発見しつつあります。

1:回復を誰かから強要されておらず、自分のペースでできる
2:純粋な知的好奇心が元々高い
3:グリーフワークをある程度やっている

まず、「回復を強要されていない環境」にいること。
依存症もトラウマも、親しい家族を傷つけてる場合があります。
その場合、自分が「回復したー!FOOOOO!!」とか言い出すと「調子に乗るな。実際にはこれと、これと、これと、これと、これが変わってねえだろ。この前も同じ失敗してただろ。お前のこれこれは一生忘れないからな。」と、高確率で横から現実を突きつけられますから、そもそも調子に乗れないのだと思われます…。

また、「DVの家族から逃げてる途中」だとか、「病気で仕事ができないけど生活保護が通るかもわからない」とか、環境的にハードすぎると回復〜〜!!とかじゃねえんだわ。衣食住の土台を作りましょう。

そして「知的好奇心」。元々知的好奇心があって、本が読めるタイプの人もこのゾーンに入りやすい傾向にあります。
後半にも書きますが、一番「楽しい!」と思えるのは、多分本で知識を獲得してる時。
本当にしんどくて回復に必要なのは、プログラムやワークを実践し、見たくなかった自分と向き合うことですが、本を読むだけならハードルが低い。
新しいことを知ることで、単純に小さく報酬系がずっと刺激されてるんじゃないかな。ていうか、私も含めて依存症系の人がハイになりやすい気がするので、依存症で報酬系がガバガバになってるだけかもしれねえ……

そして「グリーフワークをある程度やっている」
1・2もクリアしていて、回復したいと思ってるのに、ど〜〜〜〜しても自分の苦しさ、しんどさ、辛さで頭いっぱいになる…。話を聞いてると、グリーフワークをやりきれてない人が多いように思います。
逆にこのゾーンに入ってる人は、恨み・つらみをどこかで本音のまま思いっきりぶちまける。それを何らかの形で済ませてる人が多いように感じます。

依存症もトラウマも生活や対人関係がかかってるので、さっさと回復したいじゃないですか。これ以上めんどくせえことはしたくねえ!一番効果が強いやつをやりたいんだよ!!(刺激大好きマン)

それでもどこかでグリーフワークはやっておくのを、経験上お勧めします。感情は自分の本心のサインです。「どうして自分だけが…」という気持ちは、「まだ自分の中では納得いってないことがあるから、何かしらの助けが必要だ」というサインだと私は思っています。

そこにフタをして頑張ってしまうと、同じACを見ては「私はこんなに頑張ってるのに」「そんなこと言ってても意味がないのに」と、なぜか相手のことを裁くようになりますからね!!(私です)

何より「自分はどうしてこんなことをしないといけないんだ…」「何も明るい希望が見出せない…」という気持ちは、どこまでも治療の足を引っ張ります。
前向きになれない気持ちに気づけたら、「グリーフワークの必要性がわかってラッキー★」と思って、適切な方法でしっかり発散していきましょう。ちゃんと発散すれば、自分の気持ちもしっかり変わりますよ!

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