教師の大切な仕事_Vol756
「五色百人一首」を毎日行なっていた。
子どもたちは、五色百人一首が大好きだった。
どの学年でも行なっていた。
一年生も大好きになった。
意味はよくわからないけど、なんだかカッコいい短歌をあっという間に覚えてしまった。
帰りの道々に、嬉しそうに友達と暗唱する声が聞こえてきた。
一年、二年と受け持った子が、県の百人一首大会に出場した。
初回は、大敗して、大泣きしていた。
しかし、その後も、彼は県大会に出場した。
私が転勤した後も、ずっと県大会に参加していた。
五色百人一首は、学級づくりに欠かせないアイテムだった。
学級がまとまる。男女の仲もよくなる。
全員がルールを守る。
子ども達が熱中する。
子どもたちがドンドン強くなる。
五色百人一首をすると、クラスがまとまる。
そこに大切なキーワードがあった。
〔引用〕___________________
五色百人一首をすると、クラスがまとまる。多くの教師の実感だろう。
なぜ、まとまるのだろう。
それは、五色百人一首が知的な遊びだからである。
伝統的な遊びなら、どこか頭を使っているから満ち足りた気持ちになる。
大切なキーワードは何か。
それは「 」である。
「教え方のプロ 向山洋一全集90〜世界に誇る日本の文化を授業する〜」(向山洋一 明治図書)
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五色百人一首のキーワード
「知的熱中」だろうか?
「負けを認める」だろうか?
どちらも大切だ。
でも、もっと大切なキーワードだった。
〔引用〕___________________
大切なキーワードは何か。
それは「 」である。
1人残らず、全員の子がそこに存在していることが大切なのだ。
1人残らず全員の子が「存在感がある」「役割がある」ということこそ、「学級」という「集団」が安定する基礎なのである。
「教え方のプロ 向山洋一全集90〜世界に誇る日本の文化を授業する〜」(向山洋一 明治図書)
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ここにも「1人残らず」があったのか!
そうだ・・・・五色百人一首をしている時、全員が参加している。
どのタイミングでも、目の前の子と真剣勝負だ。
強い子も、弱い子も、夢中になる。
向山氏は、「『その人々の社会の中に自分も確かに存在している』ということは、学級社会にとって、何よりも大切なことなのだ。」と言う。
〔引用〕___________________
「その人々の社会の中に自分も確かに存在している」ということは、学級社会にとって、何よりも大切なことなのだ。
教育にとって、もっとも大切なことなのだ。
授業をする時も同じだ。
その授業のなかに「自分が存在している」ということこそ、すべてのことに優先して大切なことだ。
「自分が存在している」という実感こそ、人間として成長していく土台である。
「自分の存在を疑った」時、「自分の存在が実感できなかった」時、人間の心は崩壊を始める。
現象は、さまざまだ。
暴力、キレる、反抗、拒食、不登校、ありとあらゆる崩壊が顔を出す。
教室の中で「存在感を実感できない子」を見つけること、教室の中には「すべての子が存在している活動を作り出す」こと、「授業の中でも、一人一人の成長を導いてやる」こと、これは、教師の大切な仕事だ。
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「1人残らず、全員の子がそこに存在していること」を実感させる場が五色百人一首だったのだ。
向山型算数もそうだ!
向山型跳び箱指導法もそうだ!
向山実践は、そのことが貫かれているのだ。
「跳び箱指導で、跳べなかった10人が跳べるようになったが、1人だけどうしても跳べない子がいた」という実践報告を目にした向山氏は次のようにコメントしている。
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跳べない子一人ひとりへのいとおしさがないのだ。
今まで跳べなかった太郎ちゃんが跳べた。すごいことじゃないか。
その次に明子さんが跳べた。びっくりすることじゃないか。
一人ひとりが、次々に跳んでいく。奇跡の場面だ。盛大な拍手だったろう。
最後に1人残った子がいる。いいじゃないか。
「補助をしていたら、すごく上達しているよ。もう少しで、できるようになるよ。次の時は、みんなと同じにできるよ」と励ませばいいんだ。
見ている子どもも、大人も、それで十分満足する。
一人ひとりの子どもの姿が、目に入っていないのだ。
「教え方のプロ 向山洋一全集85〜自分の教室実践を向上させるプロの仕事の流儀〜」(向山洋一 明治図書)
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「クラスの中に自分も確かに存在している」
そのことを感じさせてくれる五色百人一首の力を借りて学級経営をしてきたのだ。
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