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年金請求までの長い道のり

 昨年の秋に銀行から電話があった。なんでも来年から年金を請求出来る年齢になるので、年金事務所に提出する書類などの手ほどきをするから来て下さいとのこと。そうか気が付けばそんな年になったのかとしみじみな気分で、年金手帳やら通帳、雇用保険被保険者証などを抱えて行って来た。
 するとマイナンバーカードも通知書もないことが発覚、そりゃそうだ。住基ネットもマイナンバーも反対派と言うか、前向きでなかったからスルーしていたけれど、年金を貰うのに必要とあらば仕方ない。躊躇うことなく、暮れに市役所でマイナンバーカード発行の手続き、出来上がったのを支所に受け取りに行ったの2月末の土砂降りの日、庁舎付きの駐車場は満車で、離れの駐車場に停めて、雨に足元を濡らしながら窓口に行き、説明を受け暗証番号を設定して、晴れてマイナンバーカードを受け取る。
 性格上、ここで安心してしまうと、次の動きが遅れるのは必至。速攻、年金事務所に相談予約の電話をするけれど、音声案内の繰り返しで全く繋がらない。ここでも気持ち折ることなく、渋面作ってクレームかたがた年金事務所に行って来た。
 すると、そこそこ愛想のいいお姉さんの対応にほだされて、請求をするための手続きをする段になったら、過去に国鉄、JRで働いた10年間分の記録がないことが発覚、「消えた年金記録」問題は我が身にも起きていたのかとちょっとびっくり。調べましょうと言うので、さぞかし大変な作業が行われると思いきや、名前を言って、改名の経緯がないことを口頭で言っただけで簡単に見つかって、ほっとするのと同時に、社会保険庁よ仕事してないんじゃないのという疑念が浮かんで来たけど、それも飲み込んで。大人しく請求書の提出の日の予約をして、その足で戸籍謄本を取りに市役所に行ったが、ここも駐車場が満車で、離れた駐車場に停めるのは、また雨に濡れるのも難儀だからと後日、行くことにした。
 さて、2週間ほどして晴れて予約の当日がやって来た。時間に遅れないように年金事務所に行き、予約していることを伝えると、予約時間は1時間後だった。スケジュール帳を確認するまでもなく、言われた瞬間に間違いに気が付いたものの、どの時点で間違ったのかが分からない。寝る前には10:45を確認している。朝の僅かなバタバタが錯誤を引き起こしたらしい。やれやれ、そうか年金を請求するような年の人のあるあるなのかな。
 それでも30分くらいの待ち時間で呼ばれるわけだけど、待ってる間の他の待ち人たちが面白い。何人かが戸惑っているのだ。「呼ばれると言ったけど、俺は番号を貰ってない。番号はどうしたら貰えるのだろうか」と言うような問題だ。要するに、窓口では、あなたは番号で呼びます。あなたは名前で呼びますと、ちゃんと伝えているのに、聞いた先から忘れる待ち人たち、年金請求やら相談をする年齢のあるあるなのかも知れない。きっと毎日、ここでは同じように戸惑う人たちが戸惑っているのかと思うと可笑しくなってしまった。
 それで私の年金はいつ貰えるのかと言えば、今しばらくは給与の制限がかかるのでゼロ、2年後の春あたりから給与の制限が倍くらいになると、その時点で満額支給で、金額はこれくらいですと衝撃の数字が示されてしまった。分かり易いけど受け入れたくない説明と現実だった。とてもだけど、将来の悠々自適な生活は待っていないことだけが判明した。後は1か月先に届くだろう審査結果を待つだけだ。全く楽しみがないわ。
 啄木は一握の砂で「はたらけど はたらけどなお わがくらし 楽にならざり ぢつと手を見る」と詠っている。私もぢっと空を見上げる。いい天気やなぁ、出勤するか、ひゅっと一息吸って、そのまま日常にダイブする。

2021年3月8日

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