見出し画像

夢だったか

 息せき切ってどこかの切り通しの峠を登り切った。左側には青い海と空が広がっている。さあ一気に下る。猛スピードで幾つかのカーブを曲がる。汗が風に冷やされて気持ちいい。真横に走る線路が視界を捉えたと思った瞬間、車体の倒しが遅れて、遠心力が自転車ごと路肩に持って行ってしまう。そのまま草やら砂利やらを越えて線路の中に飛び込む。自転車は途中で私の手を離れて線路の先にある鉄橋に滑り込み、枕木を何度かジャンプして落下、私は鉄橋の手前の林の中に包み込まれるように着地。なんとかもがき出て、落下した愛車を捜しに鉄橋を歩く。足元を見下ろすと、目もくらむような下に川が流れている。橋脚に這い降りて自転車を捜す。列車が近づき頭上を通過、するとその振動で足を滑らせて、辛うじて両手で橋脚の縁に掴まる格好で耐えている。ここで映画ランボーのように、手に汗握り這い上がる、そんなことは全くなく、あっと言う間にバンジージャンプのように落下、再びゴムで戻されることもなく、数十メートル下のヨシの群生の中に埋没、このヨシの群生とたまたまあった小砂利がクッションとなり命拾い。
 そのまま自転車を探すけれど、夕暮れ時、少年は帰らないと親たちに叱られる。カラスが鳴いていると思ったら、かみさんの声だった。おじさんも現実に帰ろう。
 暫くロングライドに行けてないストレスと映画「Stand by Me」と数々の自転車小説あたりの影響とここ数か月、自転車を買い替えたいと思っていたこと、畠中恵さんの八百万の神々、妖たちの活躍する本を読んだばかり、そんなこんなの世界観が織りなす束の間の夢であったのかな。20211011

ここで頂く幾ばくかの支援が、アマチュア雑文家になる為のモチベーションになります。