見出し画像

Yogaと達人

夏の朝ヨガをやっていると、場所が公園だからいろんな人が通り過ぎて行く。テニスコートに向かうカップル、ただウォーキングをするご夫婦、サッカーボールで遊ぶ親子、犬の散歩の人など様々だ。今日の気になる道行く人は、柴犬の散歩途中、リードに繋がれた少々ヨレヨレの陽焼けか焼酎焼けか分からないご老人だ。ああいう公共の空間では、それぞれに平時のソーシャルディスタンスがあってしかるべきところを、ふっと気配もなく私らの集団に接近して来て、ほー身体やええなぁと声を掛けて来た。先生がヨガですよと言うと、ほうなほうなと、笑顔で眺めてたかと思ったら、いつの間にか30メートルくらい向こうに移動していて、犬をベンチに繋いで、一人で寝っ転がって、何やら体操じみたものを始めている。ちらちらと自分の身体の軋みに顔を歪めながら、お爺さんを見ると、どう見てもヨガをやっていて、途中、腹筋も体幹トレーニングも混ぜながら、一つ一つの動きにメリハリがあって、股はしっかり割れているし、只者でない感じが半端ない。私らが終わってもまだやっていて、繋がれたワンちゃんが退屈に極まってる感じ。私も痺れを切らして、近づいて行って声を掛ける。おじさん凄いね。格闘技やってたでしょうと躊躇わずに聞くと、若い頃に合気道と太極拳、ヨガもやりよったよと、そして歳を聞くと70歳だという。ワンちゃんを撫ぜながら、こちらは62歳、もし組み合ったらと一瞬も思わせないところが、この爺さんの凄さなのだろう。やっぱり私の目に狂いはないことが確認できたことを由としよう、と思ったことをお爺さんに悟らせないように、頑張って下さいと笑顔でエールを送ってお別れをした。かように達人同士の気配を殺し合ったすれ違いの一幕が日常の中に潜んでいることを知る人は少ない。なんてね、雨に閉じ込められた暇なおっさんの妄想だ。

ここで頂く幾ばくかの支援が、アマチュア雑文家になる為のモチベーションになります。