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ふがふがはひ

 一昨日、上の前歯をまた抜いた。そう、先月2本抜いた隣の奴、ボロボロになりながらも長いこと頑張ってくれてた奴ら、そうそう1本ではなくて、3本か4本くらい抜いた。いや抜かれてしまった。抜いた歯を見せてくれたけど、まあ落ち武者のように見る影もない姿で、衛生士さんから持って帰りますかと聞かれたけれど、身体に付いてるうちはグラグラしようが痛みがでようが、可愛げがあって磨いてもいたけれど、身体から離れたあの姿は、躊躇うことなく要りませんと言ってしまった。
 問題はここからだ。予め作ってくれていた入歯を入れて、左の残った僅かな歯と歯茎で支えて、はい噛んでみて下さいと言われて噛んでみたら、なんと納まりの悪いこと、噛むほどに痛い痛い。そしてそして、むむっ、このふがふが感はもしかして、総入れ歯のお年寄りのあるあるのふがふがではないのか。おーショック、これだったのか。とうとう仲間入りか。1週間後にまた来て下さいと言われて、「はひ」、あれ、「はい」が言えない。空気がどこかから抜けてる。「ふがふが、はひ」か。
 さらに、翌日は固いものが噛めない。入歯の歯茎部分が、本当の歯茎に当たって痛い。従って、三度三度の食事が痛い。かみさんを抱える時に、食いしばり合ってた歯がない。無理やり食いしばろうとすると痛い痛い。口廻りも少し腫れてる感じ。まあ、具合の悪いこと。
 今朝のこと、調子が悪いけど見た目はいいぞと、かみさんにイーをして見せたら、ポリデントでも塗っちょきよとほざきやがった。ポリデントにカチンと来た。それは年寄りが使う物じゃないかと頭の中で思うも、もう十分に年寄りであることは自覚しているだけに、それ以上言い返せないし、キメの言葉も空気が漏れそうで言えない。ぐっと、食いしばれない歯を食いしばる代わりに、眉間に物凄い皺を寄せてやった。ふんっ、今日はこれくらいにしておいてやろう。悲しい。

20210818

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