見出し画像

SMプレイじゃないよね

 結局のところ、取り止めたはずの手術は後日の診察で、やっぱりやっといた方がいいだろうと言うことで今日、再びすることになってしまった。
 「歯槽骨整形・鼻口腔瘻閉鎖」手術と書いてあった。流石に少し緊張気味に受付を済ませて待合室で本を読みながら待っていると、長男の主治医でもある柳澤 繁孝先生が登場、奇しくも今日が先生の誕生日、記念すべき日にその道のオーソリティに執刀して貰えるのは幸せなことかも知れない。「先生、誕生日おめでとうございます」と声を掛けると、とっても喜んでくれた。これで今日の手術も大丈夫だと、たかを括ってみた。
 さて、4番にどうぞと案内され、いつもの診察台に乗って、エプロン付けられうがいに血圧測定などして次に、読むと怖くなる内容の同意書にサインすると直ぐに麻酔をバシバシと刺される。これがなかなか痛い。少し間を置いて、乱れた呼吸を整えていたら、上の前歯と唇の間を、ザーザーとメスが走っているような感じがする。局部麻酔だから、なんとなく何をされているのか分かってしまう。結構な勢いで切られて捲られて、「はい、吸って」なんて看護師に指示が飛んで、流れ出る血がザザーっと吸われて、身体がゾゾ〜っとして、気が付いたら背中が浮き上がってて、ハッと気付いて緊張を解いてを繰り返す。
 「よし」とか言って、何がよしなのか判らずにいると、「骨を削りますよ」だと。もう何も言わなくていいからどうぞ。これがまたマキタかリョウビの電動工具のような物で激しく削られるのが解る。むむむっと頑張って身体を強張らせていたら割と短時間で終わった。またまた「よしこれくらいでいいだろう」と言って、「後は縫うだけだから」とのこと。こめかみを汗なのか涙なのか分からないものが伝い落ちる。
 縫合開始、先に鼻腔側を縫って、次に口腔側と二重に縫うと言う。いやーもう判る解る。あの柔らかい歯茎とか唇の内側とかに針が抜ける感触、くっぷつっ、そして針に付いてる糸が通り抜ける感触、麻酔で痛みはないけど、どこかが痛いと感じているような嫌な感触がいつまでも終わってくれない。
 しかも途中で「うっ」とか「あら」とか「うーん」とか言われると上手く行ってるのか行ってないのか。「あら出血、動脈から出てるわ、レーザーメス取って」「そこ、もう少しこっち、はい吸って、止まらんなぁ。そこだそこ、はいよっしゃ」ヤバかったんじゃないの。また背中が浮いてる。緊張を解こう解こう。
 若手の医師が「ゆっくり呼吸して下さいね」「大丈夫ですか」と。してますしてます。喋れませんから。それでも「はふぃ」と応えてみる。「次は念のために二重に手前を縫うよ」「痛いかい」「はふぃ」「こりゃ全身麻酔の方が良かったかな」マジですかと驚く間もなく、麻酔の追加が処置される。ここまで30分くらいか。
 後は縫い合わせるだけみたいだ。それでまた30分くらいは、柔らかい癖に妙に針の抜け難い弾力のある皮膚にぷつっと、糸が通り抜け結ぶ時の、いやーな引きつれ感の繰り返しが、きっとトータルで20回くらい。
 もうオシッコを我慢してたのを忘れるくらい。これまでに受けたことのない拷問的な緊張感、「終わったよ」と言われた時の、オシッコが漏れそうな解放感と反動的な幸福感、これってSMの世界観なのかな。
 まあ何はともあれ無事に手術は終わって、もうお昼ご飯も食べてもいいと言われるけど、口に食べ物入れて大丈夫なのか。普通、外科手術で縫ったら、抜歯までは風呂にも入らないでと言うのに、口の中はいいらしい。運動は控えること、自転車通勤は3日目からはいいでしょう。それは良かった。
 と言うわけで、沢山の薬を抱えて、午後から溜まった仕事を片付けに職場に行ったのでありました。いやーもう二度と経験したくないわ。20211028

ここで頂く幾ばくかの支援が、アマチュア雑文家になる為のモチベーションになります。