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潮の匂い

 梅雨前の暖か過ぎる金曜日、田ノ浦から自転車に乗り換えて走る。歩道の向こうの海がテトラポットに波を寄せる。潮の匂いが立ち上がって、吸い込む空気が鼻腔を刺激する。すると、潮の匂いが少年の頃の記憶を呼び起こす。もう何度も書いたことだけど。。

 昭和40年代あたり、路面電車が走っていた頃だ。停車場は次の通り、知らなかった。大分駅前 - 竹町 - 官公街勧銀前 - 新川 - 浜町 - 春日浦 - 王子町 - 専売公社前 - 西大分 - かんたん - 白木 - 仏崎離合所(信号場) - 田ノ浦 - 別院前 - 両郡橋 - 東別府駅前 - 浜脇 - 永石通 - 別府桟橋 - 北浜 - 仲間通 - 富士見通 - 境川 - 餅ヶ浜 - 国際観光港 - 春木川 - 深町 - 六勝園 - 聖人ヶ浜 - 遺族会館前 - 照波園 - 弁天前 - 亀陽泉前 - 亀川新川 - 亀川駅前。きっとどこも栄えていたのに違いない。

 私が乗った区間は大分駅から白木あたりまで、ほんの僅かな区間だ。白木で降りて、潮が引いた海岸をかんたんまで、ウニやサザエにニイナやらを捕って、途中、潮が満ちて来て途中の岩に取り残されそうになって、胸まで浸かって半泣きで岸にたどり着いた時の怖かったこと、そして、びしょびしょの身体でビクを抱えて、再びかんたんから路面電車に乗って帰ったこと、その時の潮の匂いだ。それからも海には数えられない程行って、様々な潮の匂いを嗅いでいるのに、潮の匂いで思い出すのは、あの少年の日の光景ばかりだ。20220527

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