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妹よ

朝のトイレは毎日の欠かすことのない読書の時間だ。夕べ寝る前に読んだ小説を手に取ってトイレに行き便座に座る。本に挟んである栞のページを開き、昨夜の記憶を辿る。つつつと、あれ、夕べは読んでる途中で寝落ちしたのかな。読み終わりの数行が見当たらない。ストーリーが続いて行かない。少しあと戻ってみるけど、場所も時間も一致しないし、まだ登場してない奴が喋っている。夕べ、主人公が焼き鳥屋で飲んで、トボトボとアパートまで歩いて帰るあたりが行方不明だ。確かに加齢と共に物忘れは激しくなったが、夕べの食事くらいはまだ忘れていない。寝たのは更に後だから、記憶としてはまだ数時間前の新しい記憶のはず。どうしたことか。仕方なく本を閉じて、トイレットペーパーホルダーの上に置こうとした時、「下」という文字がふっと目に入って来た。あっ、そうだったのか、上巻と下巻を間違えて、持って来てしまったのか、時々あるんだよ。一人苦虫を噛みしめながら、目線を正面の壁、カレンダーに目をやり今日の日付を探す。そうかもう6月も下旬なんだ。火曜日で23日か、あっ、6月23日は妹の誕生日じゃないか。特にどうと言うこともないけど、昨日、親父の用事で実家に寄った時に、妹が台所で晩御飯の支度をしていた。出来立てのコロッケが旨そうだったので、ひとつつまみ食いさせてもらった。美味しいじゃがいもの冷製スープのレシピをラインで送っても貰った。でもその時は明日が誕生日なんて気がつきもしなかった。まあ、おめでとうと言って、いくつになったと聞いたところで、いつも私より3つか4つ下なんだから聞くまでもない。私が高校を出たあたりから、ずっとお袋の看病やら、今は親父の面倒やら任せっぱなしだ。還暦にでもなれば何かお祝いでもしてやるかな。忘れてしまったらごめんな。
今日も梅雨の中休みは自転車通勤、少し暑いが気持ちいい。

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