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青い鳥

その鳥は不思議の森の西のはずれに住んでいました。

長く美しい2本の尾羽と、遠くまで響く鳴き声は人々を魅了しました。

しかし、いつの頃からか、その青い羽根は高値で取り引きされるようになりました。

しまいには長い尾羽を求め、狩人が森に入ってくるようになりました。

狩人を恐れた青い鳥は、鳴くのをやめてしまいました。

そしてその頃から、青い鳥は西の森の奥深くで、ひっそりと暮らすようになったのです。
青い姿が目立つ昼は眠り、闇夜に紛れるように生きることにしたのです。

月の美しい夜でした。

眠りから覚めた青い鳥は違和感を感じました。
長い尾羽が無くなっていたのです。

青い鳥は慌てふためきました。

がさごそと巣を掻き回しても、尾羽は見当たりません。痛くもありません。狩人の匂いもしません。

途方にくれましたが、お腹もすいてきました。

…飛べるのかしら?

青い鳥は心配になりました。
尾羽がなくなるなんて初めてのことなのです。

隣の枝まで飛んでみました。

いつも通りでした。
むしろ身体が軽いくらいです。

…なぁんだ。

青い鳥は、どきどきしてきました。

今度は、木のてっぺんまで。

冷たい風が心地よく頬をなでます。

青い鳥は身体をぶるぶると震わせました。久しぶりにちょっと遠くまで行きたくなりました。

昔よく行った、川のほとりまで。


川は相変わらずうねうねと、月の光のもとに金色に光りながら流れていました。

水辺で虫を取り、水を飲みます。

久しぶりだね。元気にしていたかい?

川がたずねてきました。

そうね、問題ないわ。

少し痩せたんじゃないかい?

女の子にそんなことを聞くもんじゃないわよ。

そいつは失礼、君を見かけなくなって心配していたんだよ。


君、じゃなくて名前で呼んでいただけるかしら。

そうかい、なんて呼んだらいいかな?

私はミミと呼ばれているわ。





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