恋愛と『雪が降る』(アダモ)

 今日は朝からすごく寒いと思っていたら、午後になって雨が雪に変わりました。
 雪が降ると思い出すのはアダモという歌手の『雪が降る』(1969年)という歌です。

 アダモの歌は、母が好きでよく聴いていました。
 外国人が変なイントネーションで悲しい歌を歌うと思って聞いていました。
  ♪雪が降る あなたは来ない

「来ないからって、何を騒いでいるのだろう?
 きっと、雪のせいで来られないんだろう?
 雪がやんだあと、会えばいいのに」
 と、子供の頃は思っていました。 

 ごめんなさい! アダモさん。
 これはきっと、駆け落ちの約束をした相手が、姿を見せない様子を歌っているんですよね。
 でなければ、こんなに絶望しているはずがない。

 ほんの少しだけ変な日本語で歌っているけれども、
 だからこそ、なりふり構わないほどの悲しみが伝わってくる、
 時代を越えて聴かせる名曲です。
 
 アダモが同じ曲をフランス語で歌う音声も見つけたので聴き比べました。
 
 ちょうどフランス語との対訳が載っていたので眺めていたら、
 日本語歌詞と少し違っていて、びっくりしました。

 特にここです!

 日本語歌詞:
   むなしい夢 白い涙
   鳥は遊ぶ 夜は更ける

 フランス語歌詞の訳:
   絹のように白く 葬列のような涙
   梢の鳥の呻くような声

 日本語では「鳥は遊ぶ」のに
 フランス語だと鳥は「呻くような声」で鳴くのです。

 意味がちがってるじゃん!…って一瞬思いかけたのですが、
 いやいや、日本語歌詞の方が断然良いです。

 失恋で心底辛い時には、悲しみでいっぱいいっぱいで、
 他の人のことなんか眼中にないものです。

 底を打って、ちょっとだけ気持ちが上向きはじめるときに、
 ようやく、他の人の振る舞いが目に入ってきて、
 自分の悲しみとは関係なく、しっかりと世の中は回っているものだと、
 愕然とするものです。

 そういう境目のときに、鳥の姿が目に入ることもあります。
 自分の悲しみとはまったく関係なく、朗らかに遊んでいる鳥の姿。
 こういうのにまた、打ちのめされながら人は失恋から回復するんです。
 ゆっくりと、時間をかけてね。

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