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AFC女子アジアカップ ノックアウトステージ準決勝 日本対中国戦レビュー

試合全体振り返り

延長→PK戦まで突入する試合となった。結果的に、日本は負けてしまった。勝利目前まで行ったが、勝利を逃してしまった。この試合は、女子サッカー日本代表にとって、今後の糧となる一番重要な試合として、しっかりと胸に刻むべき試合かもしれない。この試合、タイ戦で4得点を決めた菅澤や、好プレーで中盤を支えた隅田の出場は無かった。1-0で折り返した前半は、右サイド清水ー長谷川、左サイド乗松ー宮澤という通常のモードだったが、後半は右サイド清水ー宮澤、左サイド乗松ー長谷川というポジショニングに変えていた。相性の良い選手同士の関係性に終始するのではなく、多様なバリエーションを増やしていきたいという意図が見えるテストの要素も含まれた采配だったような印象である。この試合の失点シーンや、ゲームプランの意識共有等、課題も表出したと思う。また、選手間の技術レベルの差も感じた。他国に手の内を見せないことや、これまでの試合の勝ちパターンに逃げないであえて試練を与えたような意図を感じさせた。

先発選手の印象

GK山下 前半19分、中国のCKショートコーナーから右サイドを崩されて上げられてしまったクロスボールに反応良く積極的に飛び出し、ピンチを絶った。後半89分の大切な時間帯のロングフィードがラインを出てしまったプレーは、らしくなかった。

右SB清水 1試合を通じて献身的に右サイドで常に良いポジションを取り続けアップダウンした。88分、相手の決定的な場面になりそうなシーンもプレスバックでしのぐプレーがあった。全体を通してミスも少なかった印象。

CB熊谷 良いフィードがいくつかあった。前半44分、長谷川への正確なくさびのパスでチャンスを作った。後半早々の失点、中国の連携パスワークは見事ではあったが、熊谷のボールホルダーへのプレッシングがやや甘く、失点の要因を作ってしまったように見えた。

CB南 体を張ったプレーが目立った。後半84分、ボールを奪いきるシーンを演出した。

左SB乗松 前半5分、良いオーバーラップがあった。前半42分、前線に速くて正確なフィードを送るプレーがあった。ファーストチョイスで仕掛けることが少なく、バックパスが非常に多いのは気になった。90分、積極的に上がっていく前向きなプレーがあった。こういったプレーを増やしていきたい。

ボランチ林 頻繁にボールを中継する役目を果たした。ファーストタッチのボールの置き所が内に入りがちなのが非常に気になる。ファーストタッチの質が上がれば、もう少し次のプレーに早く移り、より良いプレーが生まれそうである。ボールを奪われた後、奪い返しに行く一歩が遅いことが多いことも気になった。コーナーキックを蹴る機会もあり、ボールの質も悪くなかったが、得点には至らなかった。中盤で奪われるリスクが頭にあるのは理解できるが、安全第一を考えたような単純なバックパスが多いのも課題に感じた。延長101分、相手のファウルを受け、FKを獲得し、ゴールにつながったシーンはよく闘えていた。延長111分、足を伸ばして相手より先にボールにさわったシーン、疲れている時間帯によく頑張ったプレーだった。

ボランチ長野 視野が広く、相手がプレッシャーに来ていてもしっかりと認識し、的確に体を入れたりファーストタッチを工夫しており、また緩急のあるプレーで攻撃のリズムを生み出すのが非常に巧い。ただ、後半87分、ボールを奪われ、相手の決定的シーンにつながってしまう場面もあった。延長100分、林からのパスを相手のプレッシャーがある中でうまくコントロールしてつなげたシーンがあった。延長116分にも足を伸ばして相手のチャンスの芽を摘むガッツを最後まで見せていた。疲れている時間帯もプレーの質が落ちなかった。

右MF長谷川(後半から左MF) 最後まで質の高いプレーを続け、集中力が途切れることはなかった。相手のパスを読み、インターセプトするシーンも多かった。例えば後半89分のインターセプトなどが挙げられる。93分には数回のリフティングを入れたボールコントロールプレーを見せた。延長95分のライン際のテクニカルなボールの受け方も素晴らしかった。誰もが疲れている時間帯でも質が落ちなかった象徴的なシーンである。延長96分、長野→植木のポストプレーからのミドルシュートはクロスバーを叩いた。延長前半105分には枠内シュートも打ったが、相手GKに阻まれた。延長114分、乗松からのフィードがタッチラインを割りそうだったが諦めずにボールを残したプレーもあった。延長118分、失点シーンのきっかけとなるうまくボールをクリアできないシーンがあった。さすがにこの時間帯は疲労があったか。しかしその後の延長122分、相手を背負いながらの巧いポストプレーを見せた。

左MF宮澤(前半から右MF) 今までの試合より、シュートを多く打った印象がある。試合開始早々、枠内シュートを打ち、良い入りをしたものの、その後は枠外シュートばかりだった。シュートの精度を高めたい。前半の林のミスをプレスバックでさりげなく奪い返すプレーなど、献身的なプレーはいつも通りだった。

1.5列目岩渕 前半12分、左サイド植木からのクロスを、岩渕らしい間合いのワンタッチボールコントロールでシュートまで持っていったが、枠外だった。前半41分、長谷川からフリー気味でボールを受けたが、強気で仕掛けきることができなかった。

FW植木 試合を通じて、気合いが入っているのが伝わってくるプレーを見せ続けた。前半41分、相手に囲まれても奪われずに長谷川につなぐプレーがあった。2ゴールは見事だが、決めるべきところで外すシーンも多々あったのは課題。

交代選手の印象

左MF遠藤 63分に岩渕に代わって出場してから最初の10分程は、あまりボールに触るシーンが見受けられなかった。81分、ダブルタッチで相手のファウルを誘うシーンはらしいプレーだった。後半90分、チームとして奪われたボールをプレスバックで奪い返す闘志あふれるプレーがあった。延長123分、シュートを放ったが、相手DFのシュートブロックで阻まれた。

右MF成宮 延長100分、得意の仕掛けるプレーが奪われてしまったが、その後の切り替え、奪い返そうとする姿勢はさすがだった。延長112分、中盤でボールを奪いきり、清水につなげるシーンがあった。延長115分、タッチライン際で相手にボールを当てCKを獲得するシーンがあった。延長116分、遠藤からボールをゴール前中央で受け、しっかりとキープした上で右サイドに展開したプレーがあった。延長118分、プレッシャーをかけていた相手に前を向かれてしまい、取り返そうとチャージをしたプレーがファウルの判定となり、結果的に失点につながるFKとなってしまう。

左SB高橋 相手CK時に植木に代わって交代出場した為、トップスピードで走ってグランドに入っていった。延長115分、しっかりとプレッシャーをかけ、ボールを奪うプレーがあった。

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