4/17 アイドルが躁鬱拗らせて閉鎖病棟に入院してみた

また朝ご飯が食べられなかった。
そのくせ実家に置いていた本と一緒に送ってくれたリンツのいちごチョコを味わってる時
看護師さんが体温と血圧を測りにベッドまで来てくださってなんだかきまりが悪かった

綿矢りささん「ひらいて」を昨日から読み進めている。
他人が突然嘔吐してしまった瞬間のうなじから血の気が引いていくようなえぐみがある
でも主人公の愛のような激情は17歳のわたしも恐ろしいほど振り回していた。
あの頃、わたしは尊敬する人に「思慮が浅い」と頻繁に怒らせていた
当時は全く意味がわからなくて泣いたり反論したりしていたけど、今はわかるようになったよ。
尊敬する人、もう深く関わることはないかな、いや、一度だけあるかもしれない。

この病院では午前の喫煙は10:00〜11:30の間だけ可能。
10:00になった瞬間
「ミミヒメさん喫煙するならナースステーションに降りてきてください」
と爆音院内放送でお呼び出しいただいた。
流石に人権消失した。生きてて一番恥ずかしかった。
一部の患者さんを除く全員の配膳の号令は地声なのに…
わたしだけの為にスピーカー通したのなんでなん……
いつも喫煙所に行く時はひとりなことが多いのに突然4人に増えていた
看護師さんがナースステーションを離れるのはリスクがあるからなるべく一挙に行ってしまおうという働きが始まったのだと思う

ここ数日緊張体制の中暮らしているので
喫煙する時くらいなるべくリラックスしたい、というかむしろすべきなので
ひとつ空いていた椅子に流れるように着席し
周りの会話に耳を傾けることなくただ目の前の自販機のボタンやトタン屋根と建物の隙間から微かに覗く曇空を眺めながら孤高な孤独を感じた。

iQOSは1本を吸い終わるのが早い。
ひと足先に病棟に戻る際付き添ってくださったのはあのちゃんが大好きな看護師さんだった
数日前のライブの感想を聞かせてくれた
「最前列で観れて最高だったけど後ろの観客達の圧縮で肋骨が2本折れたけど幸せだったからそれくらい全然いい」といきいき語っていらっしゃった
他人を介助しなければならないのに肋骨が折れてるのはさぞ痛かろうに…

小学生の頃、喘息が酷く咳のしすぎで肋骨にヒビが入ったことがある
当時からわたしは感情表現豊かで笑い上戸だったので笑う度骨が痛むのがおかしくてまた笑っていた

携帯は使える時間なんだけどまだ「ひらいて」の世界に浸っていたくて飲み込まれそうな勢いだった
そんな時軽快な足音が聞こえてきたのでこれはスタッフの方だなと注視すると主治医だった

わたしは認知の歪みがあってその思考が他人に迷惑をかけたり自己を苦しめている気がしてそれを矯正したいと思っていた
自分の心情に違和感や気持ち悪さを感じたら情報や先人の教えを精査し取り込んで自分の知としてきたし、それを死ぬまで続けるつもりだ

主治医はその認識と対処法を持てていることは並大抵ではなく十分立派で神経質になって行動療法に専念するつもりはない
(でもわたしが希望するのであればそういった治療を受ける選択はもちろん尊重する)と助言を受けた
あとこの頃朝食を身体が受け付けないことを憂いたら
「一食ぐらい大丈夫です。例え食欲減退の原因がストレスだとしてもミミヒメさんはこの異様な環境に尋常じゃないペースで適応していますよ。」と励ましてもらった
以前弱り切っていた頃、親友に「あんたは弱いけど大丈夫」と肩を叩かれたことを思い出した
いつもうだうだ言いつつ右往左往しつつも納得できる結果を出す力を持って生きてきたんだ
もしかして:ミミヒメ 意外と強い

昼食を摂りながら親友に
「入院初日から手書きで日記を残していて、それをインターネットにアップするか迷っている」とLINEで相談したところ
1分で「絶対した方がいい」と背中を押してくれた
どういう意図を含めているかは彼女はわかってくれている気が勝手にしている
その後夕食の時間になるまで10日間の出来事・記憶を親指で書き続けた

前書きと重なるが、結構並々ならぬ想いで入院生活での日々を記録しようと決めた。
わたしが精神病棟での入院生活について調べた時あまりにも情報が少なくとんでもない不安に駆られた。
それは触れることを過剰にタブー視されているように個人的には感じたし
入院が必要な方は何かに自主的に打ち込む気力や体力を奪われている状態がほとんどでわたしのような人間は稀有なのだと思う
もしこれから精神病棟で入院する予定の方、その周辺の方の不安が少しでも取り除けたらという願いを込めてここに書いている。

記事をいくつも更新しながらTWICEのアルバム「Eyes wide open」を久々に聴いた
アートワークから収録曲、リード曲のMV・コレオ・スタイリング含めここまで気に入っているアルバムはそんなに多くない

思い立ってthe GazettEの楽曲もかいつまんで聴いた
ベーシストの方がどんな想いや状況で命を落としたのかバンドの造詣に深いわけでもないわたしには到底わからないけど、音楽は誰かが聴き続ける限り時代を超えて再生されている間爛々と生き続ける。素晴らしい媒体だと思った。

ナースステーションに預けないと充電できない瀕死のiPhoneで少しでも長く執筆するために音楽の再生を止めて環境音そのものをBGMとした
いつの間にかわたしを除く病室内のコミュニティが強固になっており
時折怪訝な単語が頻繁に飛び交って少し不吉な予感がした

その後電子機器を預ける時間になり再び「ひらいて」の世界に没頭した
病室では知らぬうちに悍ましい議論が激化し、
「ひらいて」の世界も佳境を迎えていた
もう少しで読み終わりそうな中、消灯時間になり病室は豆電球すら眠った

議論は波が引いたものの収まったわけではなく
また何かをきっかけとして大きな波が押し寄せてきそうな気配があった
噛まれてしまった件もあって何か起こる前に、と夜勤で忙しない看護師さんに申し訳なく思いつつ報告し、抗不安薬を飲ませてもらって眠った

深夜1時半に目が覚めた なんだか寒かった
「CR人生」と刺繍が入っているロンTに着替えた
また看護師さんに弄られそうな気がする

深夜3時過ぎ、また目覚めた
点灯が6時なのでもう薬はもらえない
諦めて唯一この時間も明るい自販機の前の机を陣取って「ひらいて」を読破した
その後焚き付けられるようにノートとクロミのボールペンを引っ掴んでわたしの4/17という日を取りこぼさないようにした
ただ病棟から出られず食べて寝るだけの生活ではなく成長したいし、芸術として何らかに昇華できる種にしたい

そうこうしているうちに、病棟は明るさを取り戻した。

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