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音楽なんて出来なけりゃ

顔も良くない
スタイルも悪い

勉強も出来ない
運動神経も悪い

絵心もなけりゃ
字も汚い

そんな自分が唯一
人から褒められたのが
音楽だった

3歳からピアノを始めて
小中学校では男子でピアノが弾けるのが物珍しいから
合唱の伴奏はいつも自分だった

同級生から褒められ
先生から褒められ
友達の保護者からも褒められ
初めて人から認められる快感を覚えた

いつしか将来の夢は音楽家になった

高校ではクラスのマドンナがギターをやり始めるってなって
音楽詳しそうだからという理由で先生役として頼られた
実は当時楽譜は読めたけどギターは弾けなかったから
教えるためだけにギターを買って必死に練習したりもした

折角だから大学からバンドも始めた
1から軽音楽サークルも立ち上げた
人生初の彼女もバンドがきっかけだった
そして周りが就職活動をする中、音楽活動を続けた

作詞作曲だってした
友達から褒めてもらえた
ライブハウスの人から褒めてもらえた
SNSで褒めてもらえた

嬉しくて嬉しくて
本気でミュージシャンになりたかった

けれど現実は甘くなかった
呆気なく社会人になった
安定した給料を貰うことになった

少しずつその夢は
ちゃんとただの"夢"になった

今まで音楽には良い思いをさせてもらった
いい青春の日々を歩ませてもらった

安定した給料のお陰でMacBookが買える
Logic Proが買える
プラグインが買える
何一つ不自由もなく生活をしながら
趣味として音楽をやり続けられる

これでいい
これでいいんだ
とも思うんだけど

「音楽なんて出来なけりゃ」
そう思う夜もこれまでずっとあった

ピアノなんか弾けなけりゃみんなと合唱できた
バンドなんかやらなけりゃ他人のライブに嫉妬したりしなかった
絶対音感なんかなけりゃ世の中の音を音階だと思わなかった
作詞なんか出来なけりゃ日々思いついた言葉をメモったりしなかった
作曲なんか出来なけりゃ音楽を聞くことを勉強だと思わなかった
曲なんか作れなけりゃそれで誰かに認められたいと思わなかった
同年代のミュージシャンの活躍を報じるテレビの電源を落とさなかった

そしてこの歳まで
「まだ大逆転あるかも」なんて
思わずに済んだ

ずっとずっとずっと
音楽は自分を苦しめ続けた

「音楽なんて出来なけりゃ」
こんな思いはしなかったはずだ

でももう音楽のことを何も知らない自分として
生き直すことは出来ないことも分かってる

「音楽が出来なけりゃ」
それは自分では無い
これも曲げようのない事実なんだ

これからもきっと音楽は
自分のことを肯定し
自分のことを否定し続けてくると思う

だからこそきっと
アウトプットし続けていかなければいけない運命なんだと
強く強く強くそう思う

ご清聴、ありがとうございました。

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