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なんにもないというゆたかさ

ずっと、来たかった場所にようやく来れた。

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海の碧と空の靑。

どこまでも、果てが見えない水面。

空高く、海鳥たちが優雅に舞っている。

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船を下りて車で走る。


さみどり、みどり、またみどり。

目が醒めるような見渡す限りのみどりの大地に、のびのびと稲たちが風にさざめく。


電車もない。信号もほとんどない。

街灯もあまりなくて、夜はまっくら。


なんにもない。


けれどここにはゆたかさが溢れている。

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古よりずっと続いてきた、いのちの環、がここにはある。

日本の国のゆたかさ、を想う。

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波の音

潮の香り

虫の声

草の匂い

陽のひかり

月あかり

沢のつめたさ

木々のさざめき


すべてのものが生まれきて、それぞれの生を生き、朽ちて枯れつつ、調和しながら廻り廻って、世界は編まれてゆく。

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懐かしい愛おしいものたちに別れを告げ、なにもかもが3倍速でまわる都会に来た。


ここにも煌めくものがないわけじゃ、ない。

嫌いじゃないけれど、やっぱりここはひとが世界と調和しながら生きられる場所ではない。

早さ、便利さ、合理的、効率性といったものを求め続けて突き進んだら、ひとはいのちの環から外れてしまう。


なんにもない、はずのあそこには、わたしたちがとうに失くしてしまったものが、全部あった。

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さよなら、短い夏。


次はもっとゆっくりと、ここにいたいな。

まわる環と、世界と、わたしと。


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