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歯医者の視点から

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歯医者として30年以上仕事をしてきた経験から。一般の方、そして患者さんが抱く疑問、わたしの心に残った話など、書いていきたいと思います。今のところ更新頻度は未定!!みなさんから疑問…
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美と健康  見た目と機能、どちらをとる?

今日、ネットのニュースで若い形成外科医で、高校の時から総額4千万円かけて形成手術を重ねている人の記事を見た。 先日顎を削ってさらに小顔にしたらしい。彼の持論では「小顔は美の重要な要素」らしい。本当に?? 美醜の基準は人によって違う。国や文化によって違う。しかし今はネットやSNSで情報がすぐにいろいろと広まる。習慣や文化を超えて、トレンドというものが皆の意識に影響を与える。 で、先ほどの形成外科医の小顔の話だが。「神経切っていいから」というつもりでぎりぎりまで輪郭の骨を削っ

歯医者が患者さんとうまく付き合うこつ① 対応に気をつけるべき患者さんの例

歯医者には、いろんな年代やさまざまなバックグラウンドを持った方が来られる。 美容歯科や矯正歯科などになると、患者層はもう少し絞られるかもしれないが、住宅街や街中だと、その地域の方が老若男女いらっしゃる。 というわけで、歯医者になりたてのころは、そういった方々に適応して対応するのが難しかった。 今ではそういうことはあまり感じなくなったが。 そして幸い今までわたしは患者さんたちと大きなトラブルになったことはないが、信頼関係がくずれたことにより、訴訟問題にまで発展するケースもあ

歯科医療現場での手袋使用の歴史

わたしもなんだかんだで30年歯科医療界前線で働いてるので、今日は日本の歯科医療現場での手袋の話を。 わたしが歯科医をはじめた1990年代はじめは、実は歯科医はあまり手袋をしていなかった。 大学の口腔外科などでは、とくに手術現場などでの「清潔不潔領域」の区別を含め、徹底的な手洗いや手袋の正しい着用法まで、がっつりとしぼられたものだが、実際に一般開業医の現場に出てみると、そんな時間も設備もなかった。 実際、わたしが歯医者になりたてのころは、ほとんどの先輩歯科医たちは日常の診療

歯のトラブル、顎のトラブルはあなどるなかれ。

一般の歯科医はふつうは命に係わるほどの症状や症例には遭遇しない。わたしも前回の話の他には過去に2例だけ。 一人は、30代くらい男性で、右下の奥歯の歯茎が腫れて痛い、ということで来院。口腔内の衛生状態悪し。治療途中で中断した歯が数本あった。そのうちの一本の歯の根が化膿している典型的な症状だったため、歯の根の治療をした。 しかし、抗菌薬も飲んでもらいながら3回くらい根の治療を行っても腫れがまったくひかず、むしろ腫れている部位が右下から顎の下あたりに少し広がり、発熱もあったため、

8020?20本歯があると長生きできるのか?その2-入れ歯の話。

歯の数は(親知らずを除いて)一番健康にきちんと生えていて28本。 実際、歯がないと困るかどうかは実は人によるのかも・・・と思っている。 わたしは街中の歯科医師なので、あまり高齢の方を診ることが少ないから、というのもあるが、上下ともほぼ歯がなくても、困らずに食事ができてるという方もいる。そういう方にとっては、上下とも総入れ歯を入れるよりも、歯がないほうがすっきりするのだろう。 いわゆる入れ歯、というものは、入れてない人にはわからないかもしれないが、部分入れ歯というのは多かれ少

8020?20本歯があると長生きできるのか?その1

今から30年ほど前に、厚労省と日本歯科医師会の活動として「8020運動」というものがあるのをご存じだろうか?「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」というものだ。 では、みなさん。ここでクイズです。「おやしらず」と言われるものを除いて、わたしたちにはふつう何本歯があるでしょう?? ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 答えは28本です。 しかし歯の矯正というものをしている人は、24本(何本抜いたかによりさまざま。)ということもあるし、先天欠損もありえるから、健康であるが28本に達して