クラスメイト
高校時代のクラスメイトに会った。思い返せば8年ぶり。Instagramの投稿(写真と一言のみで、どこにいるのか、何をしているのかもよくわからない、素性が明らかでない)を見ていて、「おもしろいな、きっと話したら楽しいだろうな…」とぼんやり思っていた。
高校3年生のとき、休み時間の教室は受験モードで、石油ストーブの暖かさと部活や授業、塾で疲れたみんなの眠気で充満していた。
バレー部で、クラスでも目立つ存在で、友だちとふざけ合って豪快に笑うような人でもあったけれど、根はまじめで繊細さが滲み出てもいた人だった。記憶に残っているのは、休み時間に英語の教科書を声に出して読んでいたこと。そして、みんなからなめられていた担任の英語教師の授業でも、ハキハキした声でリピートアフターヒムしていた。
彼の記憶はそれくらいで、ただのクラスメイトだった。あんまり話した記憶もない。
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そんな人に、いきなり「今夜ごはんでもどうか?」などと誘ったら、きっと無視されるか、丁重に断られるだろう。
迷ったすえに勢いで連絡した結果、「僕も話したらおもしろそうだな~と思っていたのでうれしい~」と返信が来てホッとした。
仕事終わりに、彼が好きだったという神保町の喫茶店で合流して話した。
何か特別聞きたいことがあったわけでもない。
ただ「話したら楽しそう」という予想や期待を抱いていただけ。
それでも会話は生まれた。
一時間ほどだったけれど、濃くながく感じた。
18歳からたどってきた道を思い起こしたからか。
20歳前後の何かを追い求めてもがいていたときのこと、孤独のなかで寄り添ってくれた本のことを口にしたからか。
一日はあっという間に過ぎていって、自分が何をしているのかすらよくわからないけれど、たしかに今まで生きてきたという事実を思った。
喫茶店を出て、地下鉄の階段を駆け下り、私たちはまたそれぞれの日常に戻った。