愛する神へ捧げた交響曲〜ブルックナー第9交響曲(Vol.4.1)
献辞の問題
国際ブルックナー協会のブルックナー9番のスコア(2005年コールス版)の表紙をめくると扉に「愛する神にdem lieben Gott」とある。
気になるのは[ ]付である。
作曲家の献辞ならば自筆楽譜の扉にあるのか?
答えは「ない」
国際ブルックナー協会のスコア前文冒頭にもこの献辞は自筆楽譜にはないと書かれている。
これは死の前年1895年ブルックナーが9番フィナーレを作曲中に会った主治医シュレッターの助手リヒャルト・ヘラーの証言「私は至高の陛下、そう、愛する神に自分の最後の作品を捧げる」から来ている。
作曲家に由来する文書としては存在しない献辞であるため、スコアの扉は[ ]付となっているのだが、しかしなぜそれが批判校訂版のスコアの献辞として掲げられているのだろうか?
編纂者の意図は何であるのか?
私は未完に終わったフィナーレを紐解くことで、この交響曲の全容、
そしてこの献辞の真の意味が明らかになるのではと思っている。
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