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犬とわたしのはなし。

こんにちは。みみと申します。

私は体位性頻脈症候群(POTS)、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)という病気で、現在公的支援を受けるために自治体と絶賛バトル中です。

そのバトル過程をnoteに纏めようとちまちま進めていたのですが、どうしても今書きたいと思うことがあったので、それを初めての投稿とさせていただきます。


8月2日の朝に愛犬が亡くなりました。

推定9〜10歳、難病オンパレードの保護犬です。

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なにこの変な顔の犬...って思ったそこのあなた!

わたしも初めて見た時そう思ったので大丈夫です。正常な感性です。


彼、ハルモニアことハルさんが家族に加わったのは、私が高校一年生の3月のことでした。

ハルさんは多頭飼い崩壊からレスキューされた子で、それまでは汚い小屋の中で21匹の仲間たちと暮らしていました。

推定4〜5歳とのことでしたが、実際の年齢はわかりません。

人と関わったことがないので感情が乏しく、コミュニケーションを取ることは最後までほとんどできませんでした。


さて、ハルさんと私の関係性ですが、一言で言うと「ライバル」でした。

正しく言い直すと「ハルさんが私のことを一方的にライバル視していた」です(笑)。

ハルさんが患っていたのは、クッシング症候群、肺高血圧症、フォンビルブランド病、変性性脊髄症(疑い)。

息切れ、脱毛、臓器の肥大、筋力低下......症状を挙げればキリがありません。


先に歩けなくなったのは私でした。

大学に入学して一ヶ月、無理をしたせいで症状がどーんと悪化し、外出時は車椅子が必要になりました。

その後ハルさんも徐々に手足の力が入らなくなり、バギー&車椅子デビュー。

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(後ろにいるのは同居犬です)

元々なにかと張り合ってくることはあったのですが、ハルさんが車椅子に乗り始めてからはそれがヒートアップしました。

家の中で車椅子ごと突進されて、脛あたりにしょっちゅう痣ができていました。元気でなによりです(笑)。

どんぐりの背比べが終わったのは半年ほど前、ハルさんが筋力低下により起き上がれなくなった時期です。

そこからどんどん症状は進行し、足が動かなくなり、前足が動かなくなり、頭が動かなくなり、舌が動かなくなり...。

最期まであっという間でしたが、苦しまず、ゆっくり旅立って行きました。


そんなハルさんですが、ライバルの私に「やるべきこと」をいくつか残して行ってくれました。


まず、ごはんをたくさん食べること。

ハルさんは超食いしん坊でした。

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野菜以外はなんでも大好きで、人間の食べ物を盗み食いしようとしたことは何度もあります。

ドッグカフェに行くと、机の下からのハルさんの圧はライオンのようでした。

現在私は身長160cm体重36㎏。Twitterをフォローしてくださっている方はご存知だと思いますが、体重減少に困っております。

食欲はハルさんに負けないくらいあります。ですが、食事をするとPOTSのせいで頻脈がどんどんひどくなり、食べている途中でしんどくなってしまいます。

頻脈の数値的には走りながら食べているのと変わりありません。食べたいのに食べるとしんどくなる状態がずっと続いています。

このままでは体重は減る一方なので、ハルさんを見習って増量しなければなりません。

ハルさんは亡くなる一週間前ほどから食欲があまりありませんでしたが、それでも食べられる時に食べたいものを食べていました。

それは今まさに私がやらなければならないことです。

今なにか食べれると思った時になんでもいいから食べる。それを続ければ体重は少し増やせそうです。


次に、病気と上手に向き合うこと。

ハルさんは体がしんどくてぼ〜っとしてる時もあれば、しんどそうでも体を動かしてばたばた暴れている時もありました。

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(私の部屋の前でしょっちゅう暴れていました)

これは私の憶測ですが、ハルさんは「しょうがないなあ」という病気を受け入れる気持ちと、「負けるもんか!」という戦う気持ちと、両方持っていたのではないかと思います。

受け入れ戦って、穏やかな最期を迎えることができたハルさんは本当にすごい。

受け入れて現状維持に努めるのか、戦って治すつもりで前を向くのか、私は今も葛藤しています。

どちらがいいのかは人によりますが、私はどちらかと言えば後者側です。病気を発症して5年が経ちますが、今の自分の状態を受け入れることはまだできません。

それができたら、私も病気に対しての考えが楽になりそうです。

きっとこの先何度も考えて悩むことですが、その度にハルさんの姿を思い出して少しずつ受け入れて、戦うこともやめずに頑張っていけたらいいなと思っています。


それから、家族にちゃんと気持ちを伝えること。

ハルさんには私たちの他に、小屋で一緒に過ごした21匹の家族がいます。

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定期的にドッグランやドッグカフェに集まって、みんなでゆったり過ごしていました。(通称一族会)

一族会の様子です。

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サイゼリヤの間違い探しか????

えっ分身......??

って思うくらい模様も表情もそっくりです(笑)。

ちょっぴり変わった子ばかりなので、会ったらすごく嬉しい!というわけではないのですが、一族会の時のハルさんはいつもより少しだけ嬉しそうでした。

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ハルさんが最後にみんなに会ったのは、10日ほど前に開催したオンライン一族会でした。

みんなに直接会うことはできませんでしたが、最後に劣悪な環境を一緒に乗り越えた仲間たちの元気そうな姿を見ることができて、ハルさんはとても嬉しかったと思いますし、その気持ちは一族みんなに伝わっていたと思います。


私たち人間の家族に対してもそんなに大きな感情はなかったと思いますが、それでも最期、家族が全員家にいる時を選んでくれました。

8月2日の午後、私は7ヶ月ぶりに友人と近場でお茶の約束をしていました。母は11時頃に祖母とエアコンを買いに行く予定でした。

10時半頃、ハルさんは静かに旅立って行きました。

みんながいる時を選んでくれたこと、それはハルさんから私たち家族への大切な気持ちだったと思います。

私はハルさんのように、家族にちゃんと気持ちを伝えたことはほとんどありません。

もちろん普段の生活の中で「ありがとう」や「ごめんなさい」などは言いますし、愚痴もこぼしたりします。

でも、「病気になってからもずっとサポートしてくれてありがとう」とか「これからどう生きて行けばいいのか迷った時、沢山一緒に考えてくれてありがとう」など、大切な感謝の気持ちを口に出して言ったことはありませんでした。

少し照れくさいけれど、これからは口に出して言ってみようと思います。

気持ちを伝えることができる時間は限られているのだと、ハルさんが教えてくれました。


最後に、自分の病気の経験を同じように困っている人に伝えること。

母はずっとハルさんの病状をInstagramにアップしてしたのですが、時々ハルさんと同じ病気を患うワンちゃんの飼い主さんから、治療について相談のDMがきていたそうです。

ハルさんの病気は珍しいものばかりだったので、薬の調整や突然の体調の変化など難しい点が多いように見えました。

飼い主さんはInstagramで同じ病気の子を探し、藁にもすがる思いで母にDMを送ったのだと思います。

実は私も似たような経験があります。

POTSやME/CFSは特別珍しい病気ではないですが、全ての患者に効く治療法は確立されていません。

私の主治医の先生はPOTSや起立不耐症(OI)を研究している先生なので、私は治療やその他の情報に恵まれた環境にいます。

主治医の先生がとても頼りになること、公的支援を受けるために申請をしていることなどを少しだけTwitterに投稿すると、何人かの方から医療機関や治療法を教えて欲しいというDMをいただきました。

他の投稿は「ごはん食べただけでPOTS大暴走してるの意味わかんね〜〜〜〜!」みたいな愚痴ばかりのアカウントです。そんなアカウントにDMが来たことにとても驚きました。

やっぱり同じように困っている人がいるんだなあと思い、なんとなく匿名メッセージツールを置いたところ、思った以上の件数の質問が来ました。

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(先程久しぶりにメッセージツールを開いたのですが、返信していないものがいくつもありました。近いうちにご返信させていただきますのでお待ちください。)

特に公的支援についてのメッセージが多かったので、それについてnoteに投稿しようとちまちま纏めていたのですが、文章を纏める能力があまりないため上手く進まず...。

自分のペースでやればいいやと思っていたのですが、ハルさんの生き方や闘病が母のInstagramを見ていた色んな方に影響を与えていたことを知り、それでは駄目だということに気づきました。

私は病気の啓発活動をできるほどの知力もないですし、公的支援の申請書類も主治医の先生と知人の方に任せきりでした。

そんな私にできるのは、色んな方の力を借りて得た公開できる情報を、同じ病気で困っている人に迅速伝えることだと思いました。

POTSやME/CFSは死ぬ病気ではありませんが、公的支援の有無が生死に関わることはあると思います。

私が公的支援の申請をする前に参考になる人はいないかなあと思ったように、今この瞬間、公的支援の情報が欲しいと思っている方がいるということに、ハルさんが気づかせてくれました。

私のnoteやTwitterを見ている方は限られていると思いますが、少しでも困っている方の力になれるよう私にできることを頑張っていきます。

近いうちに身体障害者手帳の申請についてのバトル過程を投稿します。もう少し時間がかかる上に失敗談になりますので、あまり期待はせずにお待ちくださいませ...(笑)。


ずらずらと色々書きましたが、今これを書きながら泣いています。

ハルさんと一緒にいた時間が一番長かったのは私でした。

二年ほど前から一人での外出はできなくなったため、平日はハルさんと家で過ごすことがほとんどでした。

体調の良い日にはお菓子を作ってほんの少しだけおすそ分けしたり、休日は私は車椅子・ハルさんはバギーで、家族と一緒にお出かけしたり。

ハルさんと色んなところに行けたことは、大切な思い出です。


ここ半年くらいはいつも私の部屋の前にいて、部屋のベッドから必ずハルさんの姿が見えました。

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(ベッドの上から撮りました)(暴れた後です)

起き上がれないハルさんでしたが、暴れると私の部屋の中まで侵入してきます。

部屋の前に置いてあるマットに戻してあげたかったのですが、握力右7㎏左8㎏筋力皆無の私が15㎏あるハルさんを持ち上げることはできませんでした。

いつも体を押して戻していました。結局また暴れて元通りのことがほとんどでしたけど(笑)。


病気から解放されてハルさんはやっと楽になれました。

でも今朝起きて部屋のドアを開けて、目の前にハルさんがいないことが寂しくて、どうして急にいってしまったの、と思わずにはいられませんでした。

後悔や悲しさはほとんどありませんが、ただただ寂しくて、ふとした瞬間に涙が止まらなくなります。

しばらくは寂しくて泣いてしまうけれど、時間が経てば、「ハルさん今日おうちに帰ってこないかなあ」と笑いながら言えるようになると思います。


私はこれから自治体とのバトルに勝ち、電動車椅子を買う予定です。

そうなると前のように家にいる日数は自然に減り、自分の部屋からハルさんのいた場所を眺める時間も減っていくでしょう。

でもそれは悲しいことではなく、私にとって大きな一歩になるはずです。


ハルさんを想いながら、前に進めたらいいな。

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またね、ライバル。

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