見出し画像

能書きだらけのプロローグ――冴えカノと作品世界のマージン

ある学生が「冴えない彼女(ヒロイン)の育て方」(以下では「冴えカノ」と略しておこう)を一番好きなアニメとしてあげていたこともあって、このノイタミナ作品のコラムを記していたことを思い出した。同名のライトノベルを原作とするこのアニメはオタクの高校生を中心としたラブコメであるけれども、その恋愛模様に同人ゲームの制作が絡んでいることも手伝って、クリエイターあるある的な楽しみ方もあるようだ。実際、主人公のクリエイターとしての成長物語というのも軸となっている。

ワタシは原作未読のため、純粋にアニメだけで楽しんでいるところなのだけれども、その面白さは「ラノベ原作アニメの登場人物が、ラノベ作品について語る」だとか、あるいは「作品内の人物が作品を俯瞰する次回予告が創られている」だとか、そういったメタフィクションによる創り込みがなされている部分に、楽しめるポイントがあると思っている。

それは、作品内の登場人物たちが「そんなラノベみたいな…」と語り合っているその場がラノベであるというお約束の(あるいはアイロニカルな)部分もあるけれど、むしろ作品内世界の、すぐ外側に現実の(=ワタシたちが生きて暮らしている、この)世界があるという想定ではない……という物語世界が存立している位置どりに、この作品の面白さがあるように感じている。

ここから先は

2,876字 / 1画像

¥ 2,000

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?