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殲滅戦の前夜に――第2話までで練る「残響のテロル」考/講

本日も、前回に引き続いて「残響のテロル」についてのお話です。取り上げる対象に同じものが続くことのないようにしたかった、という気持ちもあったのですが、やはり「いま、面白い!」というものを取り上げたいと思います。

解題からはじめますと、第3話「SEARCH & DESTROY」を見る前にこれまでの2話の内容から推理できることを整理する内容なので、題目を「殲滅戦の前夜に」としておきました。
今晩考えておきたいのは、ナインとツエルブがどこから来たのか?そして、現時点でクサいのは誰か?という2つのポイントです。前者は物語の今後に係る主人公たちの背景(過去)、後者はラスボスの候補者絞りに絡む内容、あるいは人物についての推理というところになります。

√9&12(&5?)

ナインとツエルブは、どこから来たのでしょうか? また、そこはどんなところだったのでしょうか?二人がどこぞやからか逃げてきたことは既に明らかです。そして、そこは恐らく2人以外の子供たちも居た「施設」だったことも示されています。そこにいた子供と同じような目をしていたからこそリサが生き残ったという展開は、2人以外の子供は恐らく皆死んでいると(少なくとも2人がそう信じていること)と対をなしていると考えられます。

さて、このナインとツエルブの2人は、並外れた頭脳と身体能力を兼ね備えているように描かれています。頭脳のほうがここまでのところ目立っていますが、しかし、プールに壁を飛び越えて侵入したり、あるいは軽々とパワーのあるバイクを乗りこなす(猛スピードで車道を疾走することも、「長寿庵」(皮肉な名前!)からの出前を届けるように運転することもできる!)様子からは、高い身体能力を有していることが伺えます。

しかし、それらを霞ませているのは、なんといっても二人の頭脳です。破壊行為に使っているという意味では、「使い方」を間違っているとは指摘できるわけですから、一先ずは「高い知能を持っている」という処の指摘から確認していくべきでしょう。なお、このことは優秀な頭脳は持ちながらも、社会性や規範・秩序ないし倫理観を持ち合わせていないことの指摘でもあります。ただし、それらを持ってはいるが、それらを無視し蹂躙してでも成し遂げるべき目的があるのかもしれません――この点は後にもう一度に触れることになるでしょう。

ナインとツエルブの2人は、東京都庁双塔のうち片方を、被害者の一人も出さずに崩落させるという爆弾テロを、辿れるような足跡を残さず成功させた、そんな計画を立てられる、というところからキレる頭脳を有していることが示されています。2人は、都庁の構造はもちろん、彼らが犯行のために身を寄せた高校の生徒についても全員氏名などを記憶しています。都庁の構図については、第三者を電話からの指示だけで脱出させるルートに誘導できるほど、完璧に頭に入っているのです。だからこそ、リサが「共犯者」となりえたわけですが、このことは、その場所をナインが知っているということだけでは不十分で、それを聞いた人間が理解できるように伝えられる言語能力・情報伝達能力が備わっていることを意味しています。ただ記憶力がよい、というだけではないことは明らかだと言えます。

この異常な記憶力は、彼らにつきまとう薄暗い影を引く過去と不可分なものなでしょう。1話の中盤でナインがうなされている悪夢は、おそらく過去の記憶のようですが、同じ悪夢を繰り返し見ているのは尋常でない記憶力と関連しているのかもしれません。

ここまで高い知能や頭脳と呼んできたものを、何かしらの「能力」だとするならば、次に、それはどこかの組織なりで開発されたものではないか?へと考えを進めるのも、それほどの飛躍とは言えないでしょう。なにより2人の意思とは関係なく、それらの能力がもたらされたものだったとすれば、これはありきたりではありますが、彼らの未だ目的の見えてこないテロの動機が、復讐心に根ざしていると推測できるためです。なお、第3話のサブタイトル「SEARCH & DESTROY」と同名の映画(邦題「ナイヤガラ殺人事件」)も復讐モノであるということを、この動機の推察への傍証として付け足しておきましょう。

そうなると、再びナインの悪夢に目を向ける必要があります。そこでは、ナインとツエルブが過去にどこかの施設から逃げ出してきたこと、その途上でともに逃げていた仲間が逃げ遅れ、眼前で亡くなっていることがわかります。その「もう一人」はどうやら髪の色が薄いか、あるいは白に近いように描かれていることは、おそらく3話以降に出てくるであろうハイブ(キャラ紹介)もまた、同じ施設などにいたのであろうという方向へと想像力が導かれるところです。おそらく、ハイブが施設にいた子供である可能性は高いと言えるでしょう。キャラ紹介にあるFBIや原子力科学者という肩書きからも、頭脳派である事が伺え、上の推理の信憑性を高めているように思えます。

問題は、ハイブが二人と逃げられなかった子供なのか、あるいはその子と近いところにいた子供であろうと推測されるところにあります。髪の色から親類縁者の可能性もありますし、また同時に施設内で行われた何かしらの措置によって同じような髪の色になったとも考えられます。こうなると、次の疑問は「なぜ、誰が、何のために、その様な能力開発施設を運営していたのか?」といった方向に続いてゆきますが、現時点では流石に手掛かりが乏し過ぎます。
しかし、そうだと解った上で、一つ、深読みし過ぎの類を例示してみましょう。例えば……ですが――柴崎がクロスワードを解く際に触れた「1987年」にあった出来事が何かしらのモチーフとして用いられている可能性を手掛かりとして考えてみると、たとえばWikiにある1987年の出来事を見てみれば、そこには9の重なる9月9日に「ロスアラモス研究所で第1回人工生命国際会議が開かれる」という項目があることに目が留まります。人工生命にかすりそうなものに思いをはせれば、2話で出てきた偽装…というよりは「誤認」された標的が「湾岸DNA研究所」だったところに思い至ります。実は本来の標的であったけれども、一度誤認したために同じところを捜査する動きが鈍る……なんていう形で効いてきたりするようなことがあれば、そこは人間心理と意表を突いた展開として、面白いことになるかもしれません。そして、人工生命や、あるいは遺伝子に関係する何かしらの実験が、ナインとツエルブがかつて居た施設に関係している、とは考えられないものでしょうか。

いずれにせよ今後の展開が気になるところですが、少なくともワタシは、前回も書いた要点を繰り返しておけば、引き金を引かれる世界の中で、暴力の動機(例えば復讐)を生んだ「不正義」は何なのか――これをどのように描いてゆくのかが「残響のテロル」のテロスとさえ言ってよいと考えています。

索敵(準備)―― (Re)search and destroy

組織も目的もわからないのに、ラスボスを指名するのは当てずっぽう以外の何物でもないのですが、今夜のところ「クサい」人物として、警視庁文書課の六笠(キャラ紹介)を挙げておきたいと思います。2話のラストを思い出してください。ナインが「早く出て来いよ」と言っているのは、カットの関係から柴崎に向けられているように見えなくもありません。ですが、ことによると、そこはミスリーディングの仕掛けであり、実は柴崎と同じ部屋で働いている六笠の方へと向けられている暗示かもしれません。また、これは突飛なはなしですが、ことによると柴崎が実は六笠の方を監視しているという可能性も、今の時点では否定しきることはできない段階にあります。
もっとも、人の良さそうな六笠を疑うポイントは、「逆に怪しい」というあいまいな根拠の他には、特段の「クサさ」はないようにも思われるでしょう。しかし、六笠はスピンクスの2つの犯行予告を、どちらも逸早く発見してはいなかったでしょうか?また、それをなぜ柴崎にそれをいち早く見せているのでしょう?

ただ、もう少し考えてみると、六笠はラスボスというよりは、4人目の「共犯者」なのではないか?という方がアリな気がしています。ナインとツエルブが、あれだけスムーズに犯行を進めるには、いくら優秀とはいえ2人の頭脳だけでは厳しいように思えます。そうなると、警察の内側にいて、手引きをしている人物が必要となるでしょう。ひょっとしたら、六笠は柴崎なりを焙り出す役割を演じているのかもしれません。もっとも、意図して共犯者になったリサに対し、意図せずに共犯者となっている立ち位置というのが濃厚な線という気もします。

ところで、ワタシは個人的にはストーリーからの推測が面白いと感じる質なので、こじつけをすることには若干の抵抗を感じるのですが、しかし、それでも鍵となる人物が数字に関係しているという線を受け入れるならば、そこには既に9と12、そして3という数字が出てきているところを、どう考えるか、という処に繋がります。この3つの数字が出たことによって、時計の文字盤の4つの要点のうち、残るは一つの頂点の数字、つまり6が残っているということになります。そうなると、3と6が共犯者、9と12が主犯という可能性も見えてくるのではないでしょうか。ちなみに、これは友人の指摘にあったのですが、ナインはちょっと目を引く腕時計をしています。

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なるほど、彼の左腕にはロレックスGMTマスターの赤青ベゼルをモデルとした腕時計が巻かれているのが描かれています。王冠マークは消されているようなので、あるいはレプリカなのかもしれませんが、何となく高校生として不釣合いな印象が拭えず、この点を差し引いても、目立つ時計ではあったことが、気に懸かりました。これではだいぶ根拠も弱くなっていますが、(時計の)数字と名前の接点は、このあたりになるかと思われます。
さて、どう出るのでしょう?

以上は、先行上映で見てしまっている人からすれば、「的外れことを…」という内容なのかもしれません。それにしても、どうなるのか楽しみで仕方がないと思っていたら、いつの間にか夜も明けてしまいましたね。
「今夜」はここまでにしましょう。

#アニメ #残響のテロル #考察 #評論 #残テロ

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