After Five ――ある原子力科学者の退場とその後


テロリズムの効き目は、それが引き起こす情動に依存している。 
                      ――サミュエル・ウェーバー


 サスペンス劇は、緊張の糸を張りつめたままにはできない。なぜなら、次の展開へ向け、ストーリーを進めるためにも、その糸を弛める必要があるからだ。そして、弛められた緊張の糸は、さまざまな要素と結び付けられながら、撚られ引き締められ、しかる後にサスペンスがさらなる高みへと到達するのだ。

 ただし、4話以降の『残響のテロル』は、糸を引き締めるというよりも、真綿で首を締めているかの如く、気付かせないうちに徐々に緊張感を高めてゆく演出に終始していたように思われる――と同時に、この弛緩のタイミングの終わりをワタシ自身が見計らい損ね、つまりは糸と真綿を見誤っていたことに、残テロ考が滞っていた一因がある。その意味では、見事制作者の術中に嵌っていたことを認めた方が良いだろう。 

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